2015 Fiscal Year Research-status Report
肺切除後の代償性肺成長が癌進展に及ぼす影響とその機序の解明
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15K10259
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
上田 和弘 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (90420520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西本 新 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (90396325)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 代償性肺成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
代償性肺成長は片肺全摘後の残存肺に負荷される物理的緊張により誘発されることを証明するために下記の実験を行った。マウスを用いて全身麻酔下に開胸のみ(SHAM群)、左肺全摘のみ、左肺全摘及び胸腔内充填のいずれかを施行した。胸腔内充填は肺全摘による残存肺への緊張負荷を解除する目的で行った。 SHAM群と比べて、左肺全摘のみでは術後7日目の残存肺の湿重量(0.20 ± 0.04 g vs. 0.41 ± 0.06 g, P<0.001)、乾燥重量(94.3 ± 2.1 mg vs. 183.0 ± 2.0 mg, P<0.001)、肺容積 (0.25 ± 0.06 mL vs. 0.44 ± 0.04 mL, P<0.001) が有意に増加した。一方で、肺胞数(63.9 ± 12.8/field vs. 59.1 ± 10.7/field, P>0.1)、総肺胞面積 (2436 ± 213 μm2/field vs. 2341 ± 182 μm2/field, P>0.1)、平均肺胞面積40.0 ± 10.4 μm2 / alveolus vs. 41.3 ± 10.2 μm2/alveolus, P>0.1)は群間で差がなかった。充填術を行った左肺全摘群では、術後7日目の残存肺の湿重量 (0.23 ± 0.04 g)、乾燥重量 (103.5 ± 18.4 mg)、肺容積 (0.28 ± 0.03 mL) の増加は抑制された(いずれもSHAM群との間で有意差なし)。また、肺胞数 (59.7 ± 13.5/field)、総肺胞面積 (2479 ± 224 μm2/field)、平均肺胞面積 (43.7 ± 11.3 μm2/alveolus) はいずれの群間とも差がなかった。以上より、代償性肺成長は片肺全摘後に誘発されるが、残存肺に負荷される物理的緊張が大きな誘発因子であることが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大前提である「残存肺へ負荷される物理的緊張を解除することにより代償性肺成長が鈍化する」ことが証明された。今後は本年度に確立することができた動物モデルを用いて肺転移の作成をして実験を進めることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
代償性肺成長が起こっている肺、意図的に代償性肺成長を鈍化させた(充填物を加えた群)肺において腫瘍進展に寄与する分子の発現の差異を明らかにする目的で、マウスAngiogenesis asseyを行う。これにより成長肺で腫瘍進展が加速される候補因子を特定し、実際の肺で発現に差異があることを明らかにする。ルイス肺癌細胞を用いて、代償性肺成長が起こっている肺において転移及び進展が実際に促進されることを明らかにする。
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Causes of Carryover |
ルイス肺癌細胞株を使用した研究を予定しており、細胞培養及び動物実験の一部を次年度に繰り越すこととなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ルイス肺癌細胞株を使用したin vivo, in vitro実験を行うための、細胞培養及び動物実験に要する消耗品代金に充当する。
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