2015 Fiscal Year Research-status Report
脳毛細血管内皮細胞のバリア機能を制御する生理活性因子の同定および機能解析
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15K10308
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
巽 理恵 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (40584727)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / ES細胞 / 神経前駆細胞 / 血管内皮細胞 / ペリサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①ES細胞およびES細胞由来神経前駆細胞から分泌される血液脳関門(BBB)バリア機能を強化する生理活性因子を同定すること、②同定された因子をES細胞から分化させた血管内皮前駆細胞に処理し、脳特異的血管内皮細胞への成熟分化に作用する分化誘導因子になり得るかを検討することを目的としている。 本年度は、ES細胞から血管内皮前駆細胞の分化誘導を先行させた。既に確立した分化誘導法に対し改良を加え、(i)血管内皮前駆細胞の分化誘導効率の向上と、(ii)血管内皮前駆細胞とペリサイト様細胞の2細胞のみを選択的に誘導する分化誘導方法を確立することができた。分化誘導された血管内皮前駆細胞およびペリサイト様細胞をセルソーターを用いて分取後、再培養を行ったところ両細胞集団とも増殖性を保持していることがわかった。血管内皮前駆細胞は血管内皮マーカー(PECAM-1、VE-cadherin、VEGFR2)を発現し、マトリゲル基底膜マトリクス上で管腔形成を示した。一方、ペリサイト様細胞はペリサイトマーカー(PDGFRβ、NG2、CD146、CD105)の発現が確認され、サル初代培養脳ペリサイトとマーカー発現が類似していた。次に、マトリゲル上で示す血管内皮前駆細胞による管腔形成はサル脳ペリサイトとの共培養において促進が見られたが、ES細胞由来ペリサイト様細胞との共培養においても促進が確認された。顕微鏡による観察では、サル脳ペリサイトおよびES細胞由来ペリサイトは血管内皮前駆細胞が形成する管状構造に沿うように局在することが確認され、ES細胞由来ペリサイト様細胞はサル脳ペリサイトと非常に類似した性質を保持していることが分かった。 本年度研究により、ES細胞からBBB構成細胞である血管内皮前駆細胞および当初予定し得なかったペリサイト様細胞も分化誘導することができ、本研究に必要な細胞の準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では本年度はES細胞およびES細胞由来神経前駆細胞から分泌されるBBB機能を強化する生理活性因子の探索を行う予定であったが、ES細胞から血管内皮前駆細胞とペリサイト様細胞の効率的な分化誘導法を見出すことができたため、これらの細胞の調製を先行させた。
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Strategy for Future Research Activity |
BBB機能制御に関与するES細胞由来の生理活性因子の同定を行う。ES細胞およびES細胞由来神経前駆細胞の培養上清から抽出した粗精製タンパク質画分を質量分析計を用いて網羅的にタンパク質を同定する。
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Causes of Carryover |
研究の進展に伴い、当初予想し得なかった新たな知見が得られたことから、その知見を使用し十分な研究成果を得るために当初の研究計画を変更する必要が生じたことにより、その調整に予想外の日数を要したため年度内に完了することが困難となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ES細胞が脳毛細血管内皮細胞のバリア機能に与える影響の解析、BBB機能を強化する生理活性因子同定システムの構築、生理活性因子の同定を行う。
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