2016 Fiscal Year Research-status Report
クモ膜下出血の予後改善を目的とした腎除神経術の効果とその機序
Project/Area Number |
15K10309
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
長谷川 雄 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (40599114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鯉渕 信孝 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (30456131)
河野 隆幸 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (50448536)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | クモ膜下出血 / 腎除神経術 / 脳血管攣縮 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
腎除神経術(renal denervation: RD)によるクモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage: SAH)の予後改善効果を検討した。前年度の予備検討にて、早期脳損傷に対するRDの保護効果は認められなかったものの脳血管攣縮の軽減が認められたため、今年度はRDの脳血管攣縮に対する保護効果について本実験を開始した。9-10週齢のオスSDラットを偽手術群(コントロール群:C群)とSAH群に分け、SAH導入15分後にさらにSAH+RDの偽手術群(S群)とSAH+RD(RD群)に分けた。SAHは人工呼吸器下に血管内穿刺法にて作成した。以下に結果を記載する。
(死亡率)SAHの死亡率は約35%。そのうちSAH導入後15分以内にほとんどが死亡。S群とRD群に群分けした後の死亡率は数%で有意差無し。(血圧・体重減少)SAH24時間後血圧は現時点でS群に比しRD群では約10-20mmHg低下している。体重減少率は各々約10%にて同程度。(神経所見)SAH24時間後のガルシア法+梁歩行テスト、ロタロッドテストの両試験において、SAHにより神経所見は有意に悪化、RDにて改善傾向にあり。(脳動脈径)神経所見計測後深麻酔下にブラックインク入り液体ラテックスを経心的に潅流した。その後脳を摘出し左右の前・中・後・内頚・脳底動脈の径を計測した。SAHにて有意な血管径の短縮を認めたが、S群と比べRD群にて有意に血管径の拡大を認めた。(脳血流)SAH24時間後の安静時脳血流は現時点では各群間で大きな差は認めない。(脳血管反応性)SAH24時間後に血液ガス分析を計測した上でアセタゾラミドを腹腔内投与し、以後30分間かけて5分毎の脳血流の変化を計測している。現時点でSAH後脳血管反応性の遅延が認められるもののRD群では良好な反応性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SAHの合併症である脳血管攣縮において、腎除神経術が有意に血管径の短縮を抑制している所見を得ることができた。また、神経所見は全ての動物で計測する予定であるが、現時点で腎除神経術にて改善傾向にある。以上より最も重要な予後評価において、腎除神経術の有効性が示されたと判断している。現在その有効性について脳動脈における血管平滑筋の反応について検討しているが、本年度は予後評価と腎除神経術の保護効果についての詳細な検討の導入部分を行うことを予定していたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(血圧)血圧測定実施動物を増やし、腎除神経術による血圧低下を評価する。(神経所見)全ての動物で実施する。(脳血管反応性)SAH後脳血管反応性の遅延が腎除神経術で改善している傾向があり、評価個体数を増やしその有効性を検討する。(血管平滑筋における細胞傷害性変化)脳底動脈の血管平滑筋における炎症細胞の浸潤や酸化ストレスの上昇が腎除神経術にて抑制されているか組織学的検討を中心に行う。(中枢性交感神経系の評価)腎除神経術は中枢性交感神経活動を抑制することで全身性の交感神経活動を抑制し、血管収縮軽減すると予想される。そこで、中枢性交感神経系の重要な上位中枢である視床下部室傍核における細胞傷害性変化の有無を確認し、それが腎除神経術で軽減しているか検討する。さらに血中や脳動脈、視床下部室傍核におけるノルアドレナリンやニューロペプチドY等の神経伝達物質が腎除神経術にて修飾を受けているか検討する。
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Causes of Carryover |
研究は概ね順調に遂行できている中で、購入予定の消耗品が期間内で注文する必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動物用吸入麻酔薬、注射器や注射針等の消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(1 results)