2015 Fiscal Year Research-status Report
神経膠腫の悪性転化原因変異のエキソーム解析と血中分泌小胞分析による鑑別法の開発
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15K10329
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
蓑島 伸生 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 教授 (90181966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大坪 正史 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 助教 (10327653)
足立 直樹 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 技術職員 (70300853)
徳山 勤 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90313957)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 低悪性度グリオーマ / グリオブラストーマ / 悪性転化 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳腫瘍検体および血液のうち、同一患者の悪性転化前/後の検体および血液について、IDH1,2変異のダイレクトシーケンシングによる検出を実施した(脳腫瘍検体は、悪性転化前/後の両検体ともに、免疫染色で陽性)。その結果、悪性転化前のサンプルの変異の波形が低く、均質性がかなり低いことが推測されており、より検出力が高い解析をおこなう必要性があることが明らかとなった。通常のヘテロの波形に比し、約半分程度の強度と評価した。血液検体についてはIDH1変異なし。悪性転化後の検体では、IDH1変異はヘテロ(正常/変異はおよそ1:1で検出)であった。 次世代シーケンサーMiSeqを用いて、同一患者の血液、転化前/後の3検体について全エキソーム配列情報を取得した。CLC Genomics Workbench解析ソフトウェアを用いて、各データに基づいて変異のPredictをおこなった。上述のように、均質性が低いので、悪性転化前サンプルについては、Fixed Ploidy Variant Detection(FPVD)法にて実施した。IDH1のR132H変異については、Frequency 30%として検出された(悪性転化後のサンプルでは、Frequency 69%として検出された)。 解析により、全20,950個の塩基変化が検出された。このうち、非同義な塩基変化1,825個、悪性転化後の検体のみで見出されるものは、260個であった。これについて、COSMICがん体細胞突然変異カタログデータベースにエントリーがあるものは94個(64遺伝子)であった。 脳腫瘍で変異の頻度が高い遺伝子のうち、悪性転化前に変異がみられなかったTP53およびPDGFRAに関して、悪性転化後検体にて変異を見出した。他の遺伝子 CDKN2A、EGFR、PTEN、CDK4、PIK3CA、PI3R1、MDM2、RB1などには点突然変異は検出されなかった。 他の非同義塩基変化については、Conservation Scoreを用いたアミノ酸の保存性や、GeneOntologyアノテーションの付加によって、候補遺伝子の絞り込みをおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年度は、上述の症例に関する悪性転化前・後・血液由来ゲノムの3検体について解析を行い候補遺伝子変異情報を抽出すると共に、解析の進捗に応じて、他の同種検体も対象に加えるとしており、主に解析に使用する機器として、実験実習機器センターに既設の次世代DNAシーケンサー(イルミナ社MiSeq)を当初用いてデータ取得した。 しかし、同センターに、所属機関の共通使用大型機器として、さらに高機能・高データ量のNextSeq500次世代シーケンサーの購入が予定されたため、これを用いて以降のデータ解析をおこなうことが、効率、データの精度、および費用の観点からも有利であると判断した(※本機種使用の有利な点については、次項も参照)。 実際の本機種および機種専用試薬の納入に係る手続きについては、年度中から年度末近くまでかかることとなった。そのため、上述の症例に関するデータ拡充および、他の同種検体についての解析に関して、予定に比し、達成度の遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
MiSeq次世代シーケンサーが1ランで産出するデータ量(最大7.5G、平均5G)は、全エキソーム解析に必要なデータ量を十分に満たすことができず、1検体につき複数回のランが必要であった。しかし、今回納入されたNextSeq500は最大120Gのデータ取得量であり、1検体あたり3~4倍のデータ量で、1ランで6~10検体を同時にデータ取得することを可能とする。従って、十分なデータ密度が得られることで、各データの信頼度も遙かに向上し、しかも解析速度が上がることが期待される。そのため、特に今後の研究の推進方策に変更を要しないと考える。現在、同様の悪性転化前/後の検体あるいは、複数回再発するが悪性転化していない検体などの選定を進めており、同様のデータを取得することで、悪性転化に関わる塩基変化の更なる絞り込みを進める予定である。
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Causes of Carryover |
「現在までの達成度」の項に記した理由により、次世代シーケンサー解析に用いる専用ラン試薬およびエキソンキャプチャ試薬の購入を待ったために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度末に、NextSeq500次世代シーケンサーが納品されたので、以降はこれを用いて解析を予定に従って進める。全エキソーム抽出用試薬:SureSelect XT Human Exonキャプチャライブラリ16反応セット、XTライブラリ調製試薬(ハイブリ試薬含む)16反応セット、シーケンスラン試薬キットなどは、NextSeq対応製品として購入する。
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