2015 Fiscal Year Research-status Report
ペプチドプローブによる分子標的抗がん剤の開発:悪性神経膠腫
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15K10330
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
椎野 顯彦 滋賀医科大学, 分子神経科学研究センター, 准教授 (50215935)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷垣 健二 滋賀県立成人病センター(研究所), 神経病態研究部門, 専門研究員 (70362473)
Zhao Li 滋賀医科大学, 医学部, 客員研究員 (40636156) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 悪性神経膠腫 / 分子標的薬 / 血液脳関門 / 抗がん剤 / エンドゾーム |
Outline of Annual Research Achievements |
手術で得られたヒト悪性神経膠腫から培養株を分離し、これをSCIDマウスの脳に移植するヒト悪性神経膠腫モデルマウスを確立した。このモデルを用いてマウスの静脈にファージを投与したのち脳腫瘍を摘出し、腫瘍組織に取り込まれたファージを大腸菌に感染させ増殖させた結果2種類のペプチドが見つかり、それぞれBT-33とBT-80と命名した。 がん細胞は通常の細胞よりもHSP90に対する依存性が高く、このシャペロンの抑制は抗癌作用をもつことが知られている。正常なタンパク質のHSP90への依存度は低いことから、HSP90は有望な分子標的と考えられている。我々はBT-33にHSP90阻害薬であるゲルダナマイシンをコンジュゲートして、先ほどのヒト悪性神経膠腫モデルマウスに10日間投与した。結果、ゲルダナマイシン単独投与では腫瘍細胞の縮小効果が認められたのに対し、BT-33を付与したものでは全く抗腫瘍効果が認められなかった。グラフはヒト悪性神経膠腫の2種類の細胞株にゲルダナマイシ単独(オレンジ)とペプチドをコンジュゲートしたもの(ブルー)を投与したときの細胞の生存数で、ゲルダナマイシンにペプチドを付与すると抗癌作用が消失してしまっている。 この現象は、恐らく腫瘍細胞がペプチドとともにゲルダナマイシンを取り込んだ際には、細胞質に移行することなくエンドソームに取り込まれてしまうことによると思われる。これに対して、我々はpH-dependent membrane active peptide(PMAPs)で対抗することにした。PMAPにはHA2E5-TAT、GALA、INF-7など30アミノ酸前後のペプチドが報告されており、酸性下でヘリカル構造に変化してエンドゾームの膜を不安定にするため、抗がん剤が細胞質に移行すると推測している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BT-33にゲルダナマイシンを付与した分子標的薬の開発まで終了した。BT-33を用いた新薬の抗がん作用が確認できれば、BT-80に関しても同様の方法で研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、BT-33、BT-80 の両側にそれぞれゲルダナマイシンとPMAPsをコンジュゲートしたものを作成し、培養細胞レベルで最も効果の高いものを選定しvivoモデルで抗腫瘍効果を確認し、悪性神経膠腫に罹患した症例に少しでも早く貢献できればと考えている。
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