2016 Fiscal Year Research-status Report
スーパー抗体酵素による脳腫瘍幹細胞を標的とした革新的治療法の開発
Project/Area Number |
15K10337
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
阿部 竜也 佐賀大学, 医学部, 教授 (40281216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇田 泰三 公益財団法人九州先端科学技術研究所, その他部局等, 特別研究員 (20232837)
籾井 泰朋 大分大学, 医学部, 助教 (20534192)
河島 雅到 佐賀大学, 医学部, 准教授 (20383565) [Withdrawn]
増岡 淳 佐賀大学, 医学部, 講師 (50359949)
中原 由紀子 佐賀大学, 医学部, 病院講師 (50380770)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳腫瘍 / 腫瘍幹細胞 / スーパー抗体酵素 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性脳腫瘍は予後不良であり、従来の方法では生存が望めない。近年、脳腫瘍細胞の薬剤抵抗性、放射線 抵抗性、再発時の腫瘍原性、全ての統一的な原因になっている脳腫瘍幹細胞の存在が指摘される。この細胞は大量の腫瘍細胞を供給する。脳腫瘍手術検体から採取・培養した腫瘍幹細胞を免疫不全マウスの脳内に移植すると、患者と全く同様の形態学的、遺伝学的 特徴を有し、化学療法で脳腫瘍細胞は死滅するものの、腫瘍幹細胞は生存し、再び癌細胞集団を形成し再発する。我々のグループは、抗原を認識し攻撃しながら、かつ分解(機能を破壊)できる画期的な分子である「スーパー抗体酵素」の研究に従事しているが、本研究ではヒト型「スーパー抗体酵素」が持つ抗ガン作用に着目し、画期的な抗ガン剤として実用化できるかについて検討している。多くの「スーパー抗体酵素」クローンの中から、いくつかの抗ガン作用を有する「スーパー抗体酵素」を見出しており、これらの知見を基に、本研究では、より効果の高いがん細胞を攻撃できる「スーパー抗体酵素」の作製に取り組んでいる。同時に、標的分子や組織内の局在、 また、作用メカニズムなどを解明し、画期的な抗ガン剤としての実用化を図るのが目的である。 ヒト型「スーパー抗体酵素」の特長として、①抗体医薬のように ADCC 活性に頼らずに自身でガン細胞 に障害を与えること、②低分子抗ガン剤にはない特異性を有していること、さらには、予備試験で③毒性がほとんどないこと、などはこれまでの抗ガン剤を凌ぐ非常に高い性能を有していると言える。また、 狙った分子を特異的に攻撃可能である事も、さらなる特長である。既に、脳腫瘍幹細胞の増殖抑制効果を有するクローンを分離している。今後は、その治療効果を生体内で確かめ、トランスレーショナルリ サーチとして、脳腫瘍のみならず固形がん幹細胞をターゲットにした治療法の確立を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①取得済みのスーパー抗体酵素を用いての各種がん細胞に対する in vitro 試験と抗がんスペクトル解析 取得済のいくつかのスーパー抗体酵素クローンは、脳腫瘍培養細胞に対して細胞傷害性を有していた。さらにクローンを高濃度に濃縮させたものを作用させると、脳腫瘍細胞の増殖を抑制する能力を有していた。そこでこのようなクローンを、他部位に発生したがん細胞株に対する効果を検討している。 ②新規スーパー抗体酵素ライブラリーの作成と発現 健常人から抽出した既存のスーパー抗体酵素に加えて、がん患者、特にがん免疫療法を受けている患者由来の B リンパ球を用いて新規のスーパー抗体酵素遺伝子を単離し、脳腫瘍患者関連のスーパー抗体酵素遺伝子ライブラリーを作成した。作成したスーパー抗体酵素遺伝子を大腸菌で発現・精製し、脳腫瘍細胞を用いて、in vitro 試験を行った。自家腫瘍ワクチン接種患者の中で、長期に生存している患者の B リンパ球から候補となるスーパー抗体酵素遺伝子を採取している。 ③脳腫瘍幹細胞に対するスーパー抗体酵素の in vitro での効果 脳腫瘍幹細胞をヒト脳腫瘍手術検体から、単離・培養を行っている。特殊な培養条件の下培養を行い、さまざまなスーパー抗体酵素を作用させる。その中で、脳腫瘍幹細胞の増殖抑制効果を有するスーパー抗体酵素をいくつか見つけているが、上記手法で得られたスーパー抗体酵素の中から幹細胞を特異的に阻害するクローンをさらに検討している。 ④ 脳腫瘍幹細胞の採取 ヒト脳腫瘍手術検体から、脳腫瘍幹細胞を単離・培養を行っている。小児正中線上に発生した脳腫瘍患者からのH3F3A変異を有する幹細胞、従来細胞株樹立や幹細胞採取困難とされているIDH遺伝子変異を有する幹細胞を共同研究者から供与を受け培養している。多数の幹細胞で検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
抗がん作用が見られた脳腫瘍細胞に対して、スーパー抗体酵素の投与量と効果の関連性を詳細に調べ、少量の投与で効果を発揮するクローンに対しては動物実験での検証を行っている。更にがん細胞の形態学的観察の上、がん細胞傷害性が necrosis, apoptosis によるものか、あるいは細胞周期に作用するものであるかを、形態学、免疫組織学、分子生物学的手法を用いて解明する。in vitro 試験で脳腫瘍幹細胞に効果のあったスーパー抗体酵素クローンについて、それが他の脳腫瘍幹細胞にも有効であるかを検証する。効果を示した脳腫瘍細胞株については、ヌードマウスもしくはヌードラットに移植し生体内でも有効であるのかを検討する。まずは皮下腫瘍モデルを作成し、スーパー抗体酵素を投与し、腫瘍増殖抑制効果について検討する。また投与方法(局所投与や全身投与)、 投与量、投与回数、投与薬の組み合わせを変えて、脳腫瘍脳内移植モデルでの治療効果について比較検討する。スーパー抗体酵素で脳腫瘍治療の臨床応用を目指す場合、血液脳関門の存在が問題となることが予想されるために、脳腫瘍内に抗体薬を持続注入する装置を用いて、適切な投与法についても検討している。 膠芽腫患者では、様々な遺伝子異常が報告されている。中でも遺伝子増幅や変異はよく観察され、それらを標的とした治療薬の開発がすすめられている。そこでこのような遺伝子異常をターゲットにした抗体薬が画期的で有効な抗ガン剤として実用化できるかについても検討中である。
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[Journal Article] Carotid artery stenosis with a high-intensity signal plaque on time-of-flight magnetic resonance angiography and association with evidence of intraplaque hypoxia.2017
Author(s)
Ogata A, Kawashima M, Wakamiya T, Nishihara M, Masuoka J, Nakahara Y, Ebashi R, Inoue K, Takase K, Irie H, Abe T
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Journal Title
Journal of Neurosurgery
Volume: 126
Pages: 1873-1878
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] SLC44A1 & PRKCA fusion in papillary and rosette-forming glioneuronal tumor.2016
Author(s)
Nagaishi M, Nobusawa S, Matsumura N, Kono F, Ishiuchi S, Abe T, Ebato M, Wang Y, Hyodo A, Yokoo H, Nakazato Y.
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Journal Title
J Clin Neurosci.
Volume: 23
Pages: 73-5
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] A prospective multicenter single-arm clinical trial of bevacizumab for patients with surgically untreatable symptomatic brain radiation necrosis.2016
Author(s)
Furuse M, Nonoguchi N, Kuroiwa T, Miyamoto S, Arakawa Y, Shinoda J, Miwa K, Iuchi T, Tsuboi K, Houkin K, Terasaka S, Tabei Y, Nakamura H, Nagane M, Sugiyama K, Terasaki M, Abe T, Narita Y, Saito N, Mukasa A, Ogasawara K, Beppu, T Kumabe T, Nariai T, Tsuyuguchi N, Nakatani E, Kurisu S, Nakagawa Y, Miyatake SI.
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Journal Title
Neuro-Oncology Practice.
Volume: 3
Pages: 272-280
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Dedifferentiated chordoid meningioma with rhabdomyosarcomatous differentiation on the middle cranial fossa.2016
Author(s)
Fudaba H, Abe T, Morishige M, Momii Y, Kashima K, Yamada A, Nagatomi H, Natsume A, Hirato J, Nakazato Y, Fujiki M
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Journal Title
Neuropathology,
Volume: 36
Pages: 579-583
DOI
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