2015 Fiscal Year Research-status Report
悪性脳腫瘍患者のQOL研究の確立と患者背景・治療がQOLに与える影響因子の解析
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15K10350
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
成田 善孝 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 科長 (40392344)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳腫瘍 / Quality of life / 中枢神経系悪性リンパ腫 / 神経膠腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景・目的】悪性脳腫瘍の治療で化学放射線治療は必須であるが、QOLや認知機能低下につながる。今回悪性脳腫瘍の中で神経膠腫についで多い中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)患者を対象としてQOL・認知機能の変化について化学放射線治療法の影響を調査した。【対象と方法】2000~2013年に治療を開始し1年以上経過したPCNSL42例を対象とし、QOL評価をEORTC QLQ-C30とBN-20で行った。臨床情報とQOL調査時の年齢とKPS、再発の有無、化学放射線治療とQOLの相関について検討した。【結果】男性27例、女性15例で治療開始時の平均年齢58.6 歳、QOL調査時の平均年齢62.9歳、治療開始からQOL調査までの期間中央値が39.7ヶ月(13.6~170ヶ月)であった。認知機能は治療開始時年齢が60歳未満に比べ、60歳以上で(p=0.01)、QOL調査時年齢が65歳未満に比べ、65歳以上で(p=0.004)低下していた。放射線治療歴がある方がない方に比べ有意に膀胱障害を認めた(p=0.03)。再発時にMTXの追加治療を行った方が、それ以外と比べ経済的負担を感じていた(p=0.04)。多変量解析ではQOL調査時のKPSが運動機能 (p<0.0001)と活動能力(p=0.005)に影響していた。治療開始時から経時的(最長31ヶ月)にQOL調査を行った11例では倦怠感と食欲不振でスコアの改善傾向が見られたが、運動機能、言語機能、膀胱障害でスコアの悪化傾向が見られた。【考察・結論】PCNSLでは治療開始時、QOL調査時の年齢、KPSでQOLが損なわれる可能性が示唆された。60歳以上でのPCNSL患者に対する化学放射線治療で白質脳症、脳萎縮の出現が増えることが報告されており、高齢者に対する治療成績の評価として全生存期間や無増悪生存期間に加え、QOLの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内では悪性脳腫瘍患者のQOL研究は極めて少ない。今回我々は悪性脳腫瘍患者のうち、中枢神経系悪性リンパ腫患者を対象としたQOL調査を行い、学会報告を行った。また論文も採択された。 外来・入院等の患者を対象としてQOL調査を行っており、今後さらに症例を集積する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当院をはじめとする悪性脳腫瘍の症例の多い施設に呼びかけ、今後悪性脳腫瘍患者のEORTC QLQ-C30・BN-20の治療開始前のデータの集積を行う。 悪性脳腫瘍として、成人の神経膠腫・悪性リンパ腫・転移性脳腫瘍患者について、それぞれ100人の治療開始前のデータを集めることを目標とする。QOLスコアは年齢によっても異なるため、20歳から80歳まで、10歳ごとに、少なくとも10-20人のデータを解析して、標準値を算出する。 神経膠腫の標準治療はGrade II神経膠腫で放射線治療、Grade III/IV神経膠腫では放射線+テモゾロミドによる化学療法と、テモゾロミドあるいはベバシズマブによる維持治療である。治療がQOLに与える影響を見るために、治療開始前ならびに6か月ごとのデータを集積することとする。データは、当院または協力施設の医師を通じて、当科へ集積して解析を行る。 表は現在投稿中のGrade II神経膠腫患者の、治療開始からの時期と各QOLスコア値のまとめである。この表のように、組織別・年齢別などのデータのまとめを作成する。可能であれば、悪性脳腫瘍以外に病態が落ち着いている、髄膜腫・神経鞘腫など術後の安定した患者のQOLスコア値を算出する。 これらのデータを集めてデータを解析することにより、悪性脳腫瘍患者の現状・治療の問題点について研究を進める。
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Causes of Carryover |
平成27年度は、当院並びに共同研究先の大阪医療センターの患者のQOL調査を主に行い、データ解析をおこなった。多施設における悪性脳腫瘍患者のQOL調査等は、次年度に行うこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は多施設での調査を行うため、調査研究費等に使用する予定である。
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