2016 Fiscal Year Research-status Report
吸収性スクリューによる頚椎椎間関節固定術の生体力学的研究
Project/Area Number |
15K10376
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
金 景成 日本医科大学, 医学部, 講師 (30339387)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 大蔵 日本医科大学, 医学部, 准教授 (30210701) [Withdrawn]
中嶋 隆夫 日本医科大学, 医学部, 助教 (30267190)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 頸椎 / 有限要素法 / 固定術 / 吸収性スクリュー |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化社会に伴い、ますます増加する脊椎手術において、固定術には高価な金属製インプラントが用いられる。しかし医療経済の問題を含め、放射線撮影時のアーチファクトなど様々な問題を含んでいる。一方、吸収性スクリューは安価であり、金属製インプラントにみられる金属製アーチファクトの問題や、異物が生涯にわたって生体内に残るという問題など、様々な問題点も解決できる可能性がある。 我々は、吸収性スクリューを頸椎固定術に応用し、良好な手術成績を報告してきた。特に頸椎椎間関節固定術へ吸収性スクリューを用いることで、安価なスクリュー単独で頸椎固定術を行うことができ、その利点について報告している。しかし、金属製インプラントと比較し剛性が劣る吸収性スクリューの頸椎固定術への応用に関しては、生体力学的な観点からの研究はなされていないのが現状である。そこで我々は、コンピューターによるシミュレーションにより頚椎後方固定術に吸収性スクリューを用いることによる問題点を明らかにすることで、頸椎手術に新たな選択肢が提示できる可能性があると考え、本研究を行っている。 本研究を行うためにはまず、健常のヒト頚椎のCT情報をもとにコンピューター上で有限要素法を用いて頸椎可動性モデルを作成する必要がある。しかし、ヒトの頸椎運動を詳細に再現できるようなヒト頸椎の可動性モデルを有限要素法を用いて作成することは容易でなく、過去の報告でも数編にみられる程度である。 今回我々は、ヒト頸椎CT情報をもとに、詳細な動態モデル作成に取り組み、生体力学的な研究を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を行うためにはまず、健常のヒト頚椎のCT情報をもとにコンピューター上で有限要素法を用いて頸椎可動性モデルを作成する必要がある。しかし、ヒトの頸椎運動を詳細に再現できるようなヒト頸椎の可動性モデルを有限要素法を用いて作成することは容易ではなく、過去の報告でも数編にみられる程度である。 今回我々は、ヒト頸椎CT情報をもとに有限要素法を用いて、頸椎の骨性モデルの作成に成功した。加えて、椎間板を作成して簡易的な動態モデルを作成し、更に、前縦靭帯や後縦靭帯、棘上靭帯や棘間靭帯、黄色靭帯や関節包などを追加作成することができた。 このモデルを使い、6方向への荷重実験を行い、過去の報告と比較することで、今回のモデルが受容できるものであるかを検証するが、度重なるモデルの修正や繰り返す荷重実験を行うことにより、受容できるモデルの作成に成功した。 作成した頸椎の可動性モデルへスクリューを用いて頸椎後方椎間関節固定術を行い、頸椎固定術モデルを作成した。スクリューを吸収性スクリューと定義し、6方向の荷重実験を行ったところ、スクリューの破損はみられなかった。スクリューを現在日常臨床で使用されているチタン製スクリューと定義し、同様に6方向の荷重実験を行ったものと比較したところ、チタン製スクリューと同程度の固定力があることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
今回我々は、健常のヒト頚椎のCT情報をもとにコンピューター上で有限要素法を用いて詳細な頸椎可動性モデルを作成し、吸収性スクリューによる頸椎後方椎間関節固定術が生理環境下では受容できるものであることを示すことができた。 今後は、我々が使用している吸収性スクリューが1年でその剛性が70%程度へ低下するという事実を踏まえ、そのような環境下での固定性についても検討を重ねていく予定である。 また、靭帯損傷や椎間関節損傷、椎間板損傷などの非生理的環境下ではどうか、という点に関して、更なる研究を行っていく予定である。その際、使用するスクリュー径についても解析し、必要となる強度を明らかにする予定である。その結果をもとに、椎弓ワイヤリングなどの簡易的な固定術を吸収性スクリューによる固定術へ併用することによって、どの程度の固定力が得られるのかについても、解析していく方針である。 以上の結果をもとに、病的環境下での検討を行うため、頸椎すべり症モデルや不安定性を有するモデルを作成し、同様に解析を行っていきたく思っている。 また、これらの結果を実際の手術へ応用すべく手術を行い、臨床成績についても検討していく予定である。
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