2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K10380
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
磯貝 恵理子 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 実験動物研究室, 上席研究員 (40300917)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 雄一 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 実験動物研究室, 室長 (40303119)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経発生 / 水頭症 / モデル動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢・末梢神経系の発生に重要な転写因子Hes1の機能を修飾するLmo3とHen2を高発現させたトランスジェニック(Tg)マウスは、水頭症モデルとして重要であり、その解析は水頭症の発症機構の解明につながると考えられる。昨年度までに本Tgマウスの水頭症の原因は大脳の発生異常の可能性が示唆されている。100%が水頭症を発症するダブルTgマウスでは、大脳皮質および神経幹細胞が存在する脳室周辺の領域の厚みが減少していた。幹細胞の増殖と神経発生が進行している時期である胎生13.5日で、大脳皮質を神経細胞特異的な抗体で免疫染色したところ、野生型と比較してTgマウスで異常は観察されなかった。従って本Tgマウスでは、Lmo3とHen2が協調的に作用して神経前駆細胞の発生に干渉し、大脳における神経発生の異常を引き起こしていることが示唆された。そこで、大脳の神経前駆細胞であるradial glia cellsが非対称分裂をして生じる、神経細胞の前段階の細胞であるintermediate progenitor cells (IPC) について、そのマーカー蛋白質Tbr2に対する抗体で免疫染色して検討した。胎生12.5日と13.5日の大脳皮質では、野生型と比較してダブルTgマウスでIPCの有意な増加が観察された。このことをさらに検証するために、胎生13.5日の胎仔脳室へのエレクトロポレーション法によりLmo3とHen2を幹細胞で高発現させ、胎生14.5日の大脳皮質のIPCについて検討した。コントロールの胎仔脳に比較して、Lmo3とHen2を高発現させた胎仔脳ではIPCの有意な増加が観察された。従って、本Tgマウスでは、Lmo3とHen2が協調的に作用して、神経前駆細胞から過剰なIPCを誘導し、神経幹細胞の枯渇と大脳における神経発生の異常を引き起こしていることが示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮内エレクトロポレーション法による、胎仔脳室への遺伝子導入の技術を習得し、脳の発生異常を示唆する有意な結果を出す事ができた。この子宮内エレクトロポレーション法により更に解析を進めている。本研究室が所有している、脳の発生異常を示す他の遺伝子改変マウスでも、子宮内エレクトロポレーション法による解析で、同様の発症機構が示唆された。 一方で本Tgマウスでは、抹消神経系の異常の発症の前に大脳の異常が起り致死的であるため抹消神経系の解析は進行しなかった。In vivoの実験系の結果を得ることを優先したため、Tgマウスから細胞を調製するin vitroの実験系は進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
大脳の発生異常については、子宮内エレクトロポレーション法と同時に、Tgマウス胎仔脳の免疫染色等によりさらに詳細に解析する。 胎生期終脳等のRNAを材料に、DNAチップを用いて遺伝子発現プロファイルの比較を行い、発現レベルが変化した遺伝子群を抽出する計画は、多くの遺伝子が候補としてあがってくることが予想される。そこで、既に存在している遺伝子発現データーベース等の検索や論文検索を行うことで下流遺伝子の探索を実施し、機能制御を受けると予想された候補遺伝子に関して、胎仔の脳室へのエレクトロポレーション法により、Tgマウスで観察された脳の形質との関連性を検討する。
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Causes of Carryover |
脳の異常が致死的であり、マウス個体における抹消神経系の解析が進まなかった。細胞培養より個体の解析に重点をおいた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
候補遺伝子、発現ベクター、マウス、免疫染色用抗体の購入に使用する。
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