2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K10394
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
内山 茂晴 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (10242679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二村 圭祐 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00462713)
林 正徳 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (20624703)
加藤 博之 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (40204490)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エストロゲン受容体 / 閉経モデルマウス / 滑膜内腱 / 腱鞘滑膜 / 腱細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
エストロゲン受容体にはERαとERβの2種類が存在する事が知られており、骨組織においては破骨細胞のERαが骨量維持に重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。しかし手指の滑膜内腱とその周辺組織におけるエストロゲン受容体の発現やその局在は未だ不明である。我々は、研究初年度にまず閉経モデルに用いるマウス(ddyとC57BL6)の滑膜内腱と腱鞘滑膜において、2種類のエストロゲン受容体が実際に発現しているかどうかを調べた。マウスの滑膜内腱および腱鞘滑膜よりmRNAを抽出し、エストロゲン受容体の発現をリアルタイムPCRにより確認したとろ、滑膜内腱ではERβの発現は確認されたが、ERαの発現は確認できなかった。また腱鞘滑膜においては、滑膜内腱と比較して採取できる組織量がごく微量であったため、得られたデータにばらつきが出てしまい、十分な評価が出来なかった。 続いて、滑膜内腱とその周辺組織におけるエストロゲン受容体の局在を調べるため、免疫組織化学的手法により解析を行った。その結果、ERα、ERβ共に滑膜内腱のエピテノンならびにエンドテノンにおいて腱細胞と思われる細胞に一致して発現が認められた。また、腱鞘滑膜においても両受容体の発現が確認された。一方エストロゲン受容体のmRNAレベルでの発現の局在を調べる目的でin situ hybridizationを計画していたが、未だ予備実験の段階であるため、具体的な結果が得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
滑膜内腱におけるエストロゲン受容体のmRNAレベルでの発現をリアルタイムPCRにより解析したところ、2種類の受容体のうちERβのみの発現が確認されたが、免疫染色による解析ではERαとERβ両方の発現が観察された。本結果は2種類のマウスいずれにも認められたが、このような矛盾した結果が得られた原因として、まずERαを検出する際のリアルタイムPCRの至適条件が十分に得られていないことが考えられた。この点については、現在実験条件の検討を再度行っている。また免疫組織学的解析においてもパラフィン切片を用いた酵素抗体法でしか評価ができていないことから、より多角的に評価するために、現在蛍光抗体法による解析を行っている。 またin situ hybridizationの予備実験が未だ終了していない事も遅れの原因となっているが、本実験についても今後出来る限り早く実験系を確立し、mRNAレベルでの発現の局在を評価する予定である。 さらに、腱鞘滑膜のサンプルがごく微量であったため,PCRでの検出が出来ていない点については、サンプルの回収個所を増やすなど、実験方法の再検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験において、少なくとも滑膜内腱においてエストロゲン受容体が発現している事が確認されたことから、閉経に伴うエストロゲンの変化が何らかの形で滑膜内腱に影響を及ぼしている可能性が示唆された。今後は平成27年度までに行ってきた実験の条件検討と結果の評価を引き続き行いながら、平成28年度以降に予定していた実験を平行して進めていく。 具体的には、閉経モデルマウスの作成とRNA sequenceを行うための至適RNA量の決定を先ず行い、これらが終了したところで、実際に閉経モデルマウスとコントロールマウスの滑膜内腱および腱鞘滑膜から解析用サンプルを回収し、RNA sequenceによる遺伝子発現の網羅的解析を行う。続いて、シーケンスにより得られたデータの解析とプロファイリングによって変化を認めた遺伝子の定量をリアルタイムPCRにて行い、コントロールマウスとの比較を行う。さらにプロファイリングにて変化を認めた遺伝子の発現部位の確認を免疫染色またはin situ hybridizationにて行う。 閉経モデルマウスの滑膜内腱およびその周辺組織において、実際の腱鞘炎の病理像と同様の所見が観察されるかを組織学的に検討する。さらに閉経モデルマウスにおける腱由来幹細胞の性質を特定するために、幹細胞および腱細胞マーカーの定量をリアルタイムPCRにて行う。MTTアッセイおよびコロニーフォーミングアッセイにて増殖能、コロニー形成能を定量し、さらに多分化能を各間葉系細胞への分化誘導培地下で培養し評価する。
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