2015 Fiscal Year Research-status Report
腱細胞培養系を用いた新規マイクロRNAの同定と腱細胞分化メカニズムの解明
Project/Area Number |
15K10396
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
林 正徳 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (20624703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内山 茂晴 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (10242679)
加藤 博之 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (40204490)
植村 一貴 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (50624706)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 腱細胞 / GDF8 / 筋芽細胞株 / miRNA / 標的遺伝子 / ALK-smad2/3シグナル / Smad7 / Tppp3 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度はこれまでに我々が確立したマウス筋芽細胞株(C2C12)を腱細胞へ分化誘導する培養系を用いて腱細胞の分化に重要なシグナル伝達経路の解析および腱細胞分化に特異的なマイクロRNA(miRNA)の絞り込みとその標的遺伝子の同定を行った。本培養系を用いたマイクロアレイのデータ解析では、miR-214とmiR-322を含む計8つのmiRNAの発現が分化誘導後に増加している事が確認され、さらにデータベース上での標的遺伝子の解析により、miR-214とmiR-322それぞれの標的遺伝子候補としてSmad7、Tubulin polymerization-promoting protein 3 (Tppp3)が検出された。 先行研究において、GDF8による腱細胞分化誘導の際にALK-smad2/3シグナルが関与していることが明らかとなり、標的遺伝子候補の一つであるSmad7はALK-smad2/3シグナルの抑制蛋白である事が知られていることなどから、対象をひとまずSmad7に絞り、以後の解析を行った。 リアルタイムPCRによる腱細胞分化誘導前後でのmiRNAと標的遺伝子の発現解析では、分化に伴いSmad7のmRNAレベルでの発現が低下したが、GDF8の添加の有無では発現量に差を認めなかった。またSmad7の蛋白レベルでの発現量の評価をウェスタンブロッティングにて行ったが、GDF8の添加の有無において明らかな発現量の差を検出できなかった。一方、miRNAのリアルタイムPCRではSmad7を標的遺伝子とするmiRNAのうち、miR-214のみがGDF8添加時により発現が促進されることが確認された。しかしmiR-214の前駆体や特異的インヒビターを用いた実験では、いずれも標的遺伝子の発現ならびに腱細胞の分化における明らかな変化を検出できておらず、現在も実験を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究において、GDF8による腱細胞分化誘導の際にALK-smad2/3シグナルが重要である事が証明され、さらにALK-smad2/3シグナルの抑制蛋白であるSmad7がmiRNAの標的遺伝子候補の一つであることが示唆されたことから、腱細胞の分化を制御するmiRNAとして、Smad7を標的遺伝子とする可能性がある miR-214とmiR-322を含む計3つのmiRNAに絞り込み解析を行った。その結果、miR-214のみが分化誘導前後で発現量が有意に増加していた事から、miR-214がSmad7の発現量を減少させる事で腱細胞の分化を促進させる可能性が示唆された。しかしC2C12におけるSmad7の蛋白レベルでの発現量は実際にはかなり少なく、ウェスタンブロッティングでの検出にかなりの時間を要してしまった。また今のところGDF8による腱細胞への分化誘導前後でSmad7の蛋白レベルでの発現量に有意な差を検出する事が出来ておらず、miR-214の前駆体や特異的インヒビターを用いた実験についても、標的遺伝子の発現および腱細胞の分化における明らかな変化を検出できていない。これらの実験については、今後も十分に条件を検討した上で、結果について検証する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
miR-214と標的遺伝子候補であるSmad7については、引き続き各実験条件の検討を行い、GDF8刺激下での腱細胞分化との関連性について調査する。その結果、関連性が認められた場合は、レポーターアッセイによりmiR-214の抑制活性の測定と特異性の確認を行う。またもう一つの標的遺伝子候補であるTppp3については腱細胞分化における役割が未だ不明であることから、まずsiRNAを用いたTppp3のノックダウンによる腱細胞分化への影響を調べる。続いてマウス腱断裂モデルを作成し、免疫染色により腱断裂治癒過程におけるTppp3発現細胞の局在を調べる。また腱細胞の分化マーカーであるTenomodulin、Scleraxisとの二重染色を行い、同蛋白と腱細胞分化との関連性を組織学的に評価する。 先行研究では,腱細胞分化誘導5日目に発現量が増加するmiRNAについて解析を行ったが、腱細胞分化誘導直後(24時間後)に発現が変化するmiRNAを同様の手法で検出し、さらにその機能解析を行う。また両タイムポイントにおいて発現量が有意に低下するmiRNAについても同様の解析を行い、腱細胞分化との関連性を調査する。腱細胞分化との関連性が確認されたmiRNAについては、順次ノックアウトマウス作成のための準備を行う。 以上より得られた結果は、日本整形外科学基礎学会ならびに米国のOrthopaedic Research Society(ORS)において発表する。
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