2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K10416
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
家口 尚 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (70275246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 卓也 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (10597321)
岡田 充弘 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (40309571)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | デュプイトラン拘縮 / アンドロゲン / 性ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
手指の屈曲変形をきたすデュプイトラン拘縮(手掌線維腫症)の病因は未だ明らかでなく、現在、有効な薬物治療は存在しない。このため手術による外科的治療を選択せざるを得ない。これまでのデュプイトラン拘縮の基礎研究において、デュプイトラン拘縮では正常手掌腱膜の線維芽細胞が筋線維芽細胞に異常分化していることが判明している。これにより正常手掌腱膜が病的腱膜となって徐々に短縮することで、指屈曲を引き起こすとされている。線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化については、これまで様々な成長因子(IGF, TGFβ, FGF, BMP、EGF、IL-1、PDGF等)や環境因子(低酸素やフリーラジカルの存在)の関与が示唆されているが、主たる制御因子は未だ不明である。デュプイトラン拘縮は明らかに男性優位(7:1~15:1)に発症する疾患であることから、本研究では性ホルモンであるアンドロゲンに着目してデュプイトラン拘縮の病態解明を行う。まず、デュプイトラン拘縮の重症度とアンドロゲンの発現量(血中濃度や組織発現量)との関連性について詳細に検討する。デュプイトラン拘縮の重症度については、レントゲン画像パラメータや病的腱膜における筋線維芽細胞の発現量で評価する。次に、新規治療薬の可能性を秘めたアンドロゲン阻害剤のin vitroでの投与効果についてデュプイトラン拘縮のprimary culture(線維芽細胞)を用いて検証し、アンドロゲン阻害剤がデュプイトラン拘縮の治療薬となりうるのか検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、デュプイトラン拘縮の重症度についてレントゲン画像パラメータを用いて評価し、また術中採取したデュプイトラン拘縮患者の病的腱膜の組織切片を作製した。 近年、示指の長さと環指の長さが性ホルモン濃度に関係することが判明した。アンドロゲンが高値であれば示指よりも環指が長くなり、示指長/環指長比が小さくとされている。そこでデュプイトラン拘縮患者における示指長/環指長比についてレントゲン画像パラメータ(指節骨+中手骨の長さ)を用いて測定した。デュプイトラン拘縮患者は指が屈曲拘縮しており、正確な指の長さを測定することが困難であるため、指が伸びている健側の手を撮影したレントゲン画像を用いて指の長さを測定した。また非デュプイトラン拘縮患者としては手根管症候群の患者を選択し、同様に手を撮影したレントゲン画像を用いて指の長さを測定した。結果、デュプイトラン拘縮患者(n=16)の示指長/環指長比は、非デュプイトラン拘縮患者(n=23)と比して有意に小さかった。レントゲン画像パラメータ計測はPost hoc power analysisで高い検出力が得られ、検者内・検者間信頼性も高かった。以上からデュプイトラン拘縮患者ではアンドロゲンが高値であることが示唆された。 次に、デュプイトラン拘縮患者の病的腱膜における筋線維芽細胞の発現について調査するために、 手術で切除された病的腱膜を採取し組織切片を作製した。デュプイトラン拘縮の重症度を判定するために、罹患指ごとに病的腱膜をできるだけ長く採取し、長軸方向で組織切片を作製した。非デュプイトラン拘縮患者としては手根管症候群で切除した正常手掌腱膜を採取し、組織切片を作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に作成した組織切片を用いて重症度評価を行う。抗α-SMA (α-smooth muscle actin)抗体と抗Fibronectin抗体を用いた免疫染色で筋線維芽細胞の発現を確認し、筋線維芽細胞が組織学的に集簇している個所を重症として同定する。次に、抗アンドロゲンレセプター抗体を用いてアンドロゲンレセプターの局在を同定する。画像解析計測ソフトを用いて抗アンドロゲンレセプター抗体の異染性を定量評価する。定量評価したアンドロゲンレセプター発現量と筋線維芽細胞発現量との相関について調べる。また、各指の病的腱膜組織からRNAを抽出し、Real time RT-PCRでアンドロゲンレセプターの発現量を測定する。 次に、デュプイトラン拘縮および正常腱膜のprimary culture(培養線維芽細胞)におけるアンドロゲンレセプターの発現量をIn vitroで測定し、正常および組織学的な重症度との相関について検討する。デュプイトラン拘縮の病的腱膜(手術により切除採取する)を単離培養し、線維芽細胞をprimary cultureする。重症度に合わせて、屈曲角度の異なる各指の病的腱膜から線維芽細胞を採取する。コントロールは正常手掌腱膜(手根管症候群の手術により切除採取する)から単離培養した線維芽細胞とする。それぞれの培養線維芽細胞に発現するアンドロゲンレセプターについて、Real time RT-PCRでその発現量を測定し、正常との比較および重症度(指の屈曲角度)との相関について調べる。さらにデュプイトラン拘縮の培養線維芽細胞は、アンドロゲン投与により筋線維芽細胞への分化が促進し、抗アンドロゲン阻害剤投与により筋線維芽細胞への分化誘導が抑制されるのかどうか、In vitroで検証する。
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Causes of Carryover |
本年度は、デュプイトラン拘縮患者における示指長/環指長比についてレントゲン画像パラメータを測定しアンドロゲンホルモンとの関与を検証したが、同時に得られた病的腱膜の組織学的評価の遂行中であり、組織学的な評価までは至っていない。そのため本年度に予定していた免疫染色・組織学的評価にかかる費用が見積もりよりも少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降、抗α-SMA (α-smooth muscle actin)抗体と抗Fibronectin抗体を用いた免疫染色、各指の病的腱膜組織からRNAを抽出し、Real time RT-PCRでアンドロゲンレセプターの発現量を測定する実験計画を遂行するために、各種免疫染色(抗体代含む)にかかる費用として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)