2015 Fiscal Year Research-status Report
脊髄損傷に対するiPS由来神経幹細胞移植後の造腫瘍性の解明と制御
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15K10422
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岩波 明生 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (40327557)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脊髄損傷 / iPS細胞 / 神経幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
京都大学で樹立されたintegration free iPS細胞4株(414C2、409B2、836B1、836B3)を当研究室で開発したEB法(Okada et al. Stem Cells 2008)を用いて胚葉体を形成した後、NS/PCsへと分化誘導する。これらの細胞にレンチウイルスを用いたルシフェラーゼ遺伝子導入(ff-Luc)を行い、 細胞増殖の度合いをBio Luminescence Imaging で確認すると共にこれらのiPS-NS/PCを血清条件でNeuron, Astrocyte, Oligodendrocyteに分化させ、従来のretroviral vectorにより作製されたiPS由来iPS-NS/PCとの相違を比較解析した。 In vitroではいずれも明らかな腫瘍化は認められず、いずれもNeuron優位の分化を示している。Retroviral vectorによる従来法でもpreliminaryには同様の結果が得られている。さらに、長期培養においても明らかなin vitroでの腫瘍形成は認められなかった。 これらのiPS-NS/PC各細胞株をNOD-SCIDマウスの胸髄圧挫損傷モデルの損傷中心部に,各5×105個ずつ、損傷後9日目に移植した。移植後3ヶ月間、IVIS systemによるbioimagingで細胞の生着・増殖の評価及び下肢運動機能評価(Basso Mouse Scale: BMS)などの機能評価を行った。移植後3ヶ月の時点で損傷部脊髄を採取し,組織学的解析を行うと共に、移植前の細胞と移植後3ヶ月の損傷中心部脊髄からそれぞれmRNAを抽出し、次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子発現解析を行った。造腫瘍性836B3細胞株移植後3ヵ月の脊髄組織において、細胞増殖および腫瘍化に深く関わるFactor X, YのmRNA発現が、非腫瘍性の細胞株に比べて明らかに上昇していることが分かった。これらの組織中でのX, Y発現もまた免疫染色により増加していることが確認され、腫瘍化とX, Yの関連性に関して注目し新たな実験を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに、作製方法の異なるiPS細胞を用いた腫瘍化に関する解析をin vitro, in vivoで進めることができている。 また、in vivoにおいても移植後の長期経過の中で、腫瘍化している組織としていない組織を確認すると共に、そのgenetic epigeneticな差異についての解析結果が徐々に出てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
iPS-NS/PCが腫瘍化する原因として、もともとin vitroで腫瘍形成能を獲得しているのか、あるいは移植後の損傷脊髄内微小環境により、腫瘍化がおこるのかは不明である。 昨年度までの研究結果を踏まえて、今後はまず、in vitroで上記のiPS細胞株およびiPS-NS/PCを培養し、細胞からゲノムDNAを抽出した後、一塩基多型解析(SNP array)によるcopy number variant(CNV)解析やDNAメチル化の解析を行い、腫瘍原性の評価を行う。 また、①京都大学山中研で樹立されたiPS細胞4株および②これらの各細胞株をiPS-NS/PCへ分化誘導した細胞株 ③iPSのfeeder細胞④Glioblastoma(GBM)細胞株(U87細胞)⑤UCLAから得られたGBM患者由来の細胞株 をそれぞれ培養し、これらのサンプルからQiagen社のDNeasy®を用いてDNAを抽出する。Illumina社のInfinumシステムを用いて、一塩基多型解析(SNP array)によるcopy number variant(CNV)解析やDNAメチル化の解析を行うことも予定している。これらの結果を通じてiPS細胞由来神経幹細胞移植後の腫瘍化のメカニズムとその予防についての方索を確立することができると考えている。
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Causes of Carryover |
昨年度は in vitroでの培養実験と腫瘍化に関する研究がメインであったため、microarrayやin vivoの研究が若干予定通りに進行せず、後回しになった。その分余剰金が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、microarrayや候補遺伝子の強制発現実験、in vivoでの長期経過に関する実験を施行するため、前年度の繰り越し金を含めて資金を使用する予定である。
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