2016 Fiscal Year Research-status Report
骨髄間質細胞を標的とした、悪性骨軟部腫瘍の新規治療法の開発
Project/Area Number |
15K10449
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松本 嘉寛 九州大学, 医学研究院, 准教授 (10346794)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 悪性骨軟部腫瘍 / 薬剤耐性 / 骨髄間質細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
系統的化学療法導入により原発性悪性骨軟部腫瘍(以後、肉腫)の予後は改善したが、遠隔転移や薬剤耐性例を来した進行例の予後は極めて不良である。腫瘍の転移や薬剤耐性化においては、腫瘍細胞とその周辺の腫瘍間質との相互作用が重要な役割を担っている。本研究では、肉腫周囲の腫瘍間質細胞の中で、特に骨髄間質細胞(Bone marrow stromal cells: BMSC)に焦点をあて、肉腫の悪性化におけるBMSCの役割を解明するとともに、BMSCを標的とした新規治療法の開発をめざす。
本年度は、腫瘍細胞そのものに焦点をあて、代表的な軟部肉腫である、滑膜肉腫の薬剤耐性機構について、検討をすすめた。 Mult-kinase阻害薬であるpazopanib (PAZ)は肉腫における初めての分子標的治療として承認され、軟部肉腫の2nd-line chemotherapyの有効な手段となっている。しかし、PAZが初期に有効であっても、投与が長期化するにつれ徐々に耐性化する例があり、新たな問題が生じている。そこで、滑膜肉腫細胞株のPAZ耐性株をいち早く樹立し、その耐性化メカニズムの検討を行った。その結果、PAZは親株の細胞周期をG1/S期で停止させること、耐性株ではErk情報伝達系が活性化され、G1/S期停止が回避されていることを見いだした。さらに、Erk阻害剤によりPAZ耐性が克服されることを確認している。臨床的に極めて高いインパクトを持つ結果であり、早期の臨床応用を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の成果はすでに「Activation of ERK1/2 Causes Pazopanib Resistance via Downregulation of DUSP6 in Synovial Sarcoma Cells. Scientific report, in press」として論文発表され、国内外で高い評価を得ている。よって、研究計画は順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、肉腫細胞の薬剤耐性化における腫瘍細胞とBMSCの相互作用に関して、重点的に解析をすすめる。 具体的な手法として、(1)骨転移を生じた骨軟部腫瘍のサンプルより、レーザーマイクロダイセクション法を用いて、肉腫細胞とBMSCを別々に採取する。(2) 上記サンプルも用いて、肉腫細胞の薬剤耐性化メカニズムをDNA microarray, proteosome、ギガシークエンサーなどを用いて解析し、候補となる遺伝子群をクラスタリング解析で同定する。(3)臨床検体を用いて、(1)-(2)で得られた結果を検証し、肉腫の薬剤耐性化のバイオマーカーを同定し、抗がん剤治療におけるPrecision medicineの基盤確立を目指す。
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Causes of Carryover |
効率的な消耗品の使用が可能であったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として使用
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