2015 Fiscal Year Research-status Report
骨軟部腫瘍転移における自然免疫応答回避の分子メカニズム
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15K10458
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Disaeses |
Principal Investigator |
笹川 覚 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所), その他部局等, その他 (80345115)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 転移の分子メカニズム / Twist1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では滑膜肉腫細胞株を用いて、骨軟部腫瘍の転移を促進する分子メカニズムにフォーカスして解析を行っている。これまでに、Osteosarcomaの肺転移モデルから骨軟部腫瘍の転移を司る重要な因子としてTwist1の発現を見出している。滑膜肉腫細胞株においても転移が顕著に見られた患者から樹立されたYamato-SS株でTwist1は高発現しており、転移の殆ど見られなかった患者から樹立されたAska-SS株でTwist1はほとんど発現していなかった。これらのデータから、Twist1が骨軟部腫瘍の転移能を規定する重要な因子であると考え、その分子機能と生物作用について更に解析を行った。ヒトは免疫システムを持ちその中でNK細胞は腫瘍細胞のクリアランスに重要な働きを持つと考えられている。腫瘍化、放射線障害、化学物質暴露などでダメージを受けた細胞はNK細胞のNKG2Dに認識されるべくMICA/Bを細胞表面に提示する。Twist1をほとんど発現しないAska-SSではMICA/Bは高発言しており、Twist1を高発現しているYamato-SSではほとんど発現していなかった。Aska-SSにTwist1を過剰発現させたところ、MICA/Bの発現は顕著に低下したことから、Twist1はMICA/Bの発現に抑制的に働くと考えられる。更に、Twist1は骨・軟骨の分化過程で需要なSox9の発現を調整し、またSox9は滑膜肉腫においてVEGFの発現調節を担っていると推測される。更にTwist1は細胞運動の調節因子としても機能を有しており、これらのことを総合的に勘案すると、Twist1は免疫システム回避、血管透過性、細胞運動性を制御しながら転移に有利な特性を細胞に付与していると推測している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は当初の計画通りに進展している。ただし、2015年度中は日本がん転移学会の学会事務局として半年以上にわたって長時間拘束される日々が続き研究ペースが遅めに推移している。2016年度の前半は研究機関の異動と研究所新設の準備室の仕事があるため、引き続き研究ペースが遅めになることが見込まれている。これらについてはクリティカルな問題ではないが、研究機関の異動が済み次第、回復に努める。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題の推進方策について、予定通りにGain-of-function、Loss-of-functionのアプローチでTwist1の転移における分子基盤を明らかにするとともに、マウスモデルを用いたinvivoモデルでTwsit1によって付加された転移能獲得のための各機能の確認を行う。平行して、明らかにした分子基盤を元に転移抑制に効果が期待される薬剤についてスクリーニングを行い(既存の抗癌剤をはじめとする各種薬剤の転用も含む)、見出された薬剤の転移抑制効果を確認していく。
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Causes of Carryover |
日本がん転移学会の学会事務局としての用務が長時間拘束されたため、実験ペースが遅くなった。そのため当初計画よりも使用する物品などに余裕があったため次年度にくりこして使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主にプラスチックウェアなどの消耗品を購入する予定。
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Research Products
(2 results)