2015 Fiscal Year Research-status Report
人工関節置換術と椎体形成術の長期成績を向上させる新規骨セメントの開発
Project/Area Number |
15K10469
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 公志 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 特定講師 (00437229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宗 和隆 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30514038)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生体材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
3.5~4kgの日本白色家兎の大腿骨顆部に表面置換型の人工膝関節を埋入する実験を行うべく、日本白色家兎の大腿骨顆部の3Dモデルを作成し、人工膝関節のシミュレーションを行ったが、手術手技の難易度が高く、再現性の確保が困難と判断された為、兎用の人工膝関節の開発は断念した。代わりに、膝関節内の関節液の影響を受ける大腿骨顆部関節面に径2.5mm、深さ5mmの円筒形の骨欠損を作成し、市販骨セメントまたは開発中の酸化チタン含有骨セメントを埋入し、6、12、26週で屠殺して、セメント-骨界面の状態の組織学的評価を行い、荷重と関節内圧の負荷のかかった状態での骨伝導能の定量的評価を行うモデルを作成した。この評価を行うことにより、膝関節内で開発中の酸化チタン含有骨セメントを用いた場合の骨との接着性に関する優位性、安全性の評価が可能であると考えられる。 また、ビーグル犬の人工股関節置換術を行い、12週、26週、52週で屠殺して、切り出した標本を用いてpush out testを行い、骨結合能の評価を行い、大腿骨側では酸化チタン含有骨セメントが市販の骨セメントと比較して有意に骨結合能を持つことが示せたが、臼蓋側についてはmechanical testは困難な為、マイクロCTを用いて、骨結合形態の詳細な評価を行って、affinity indexを用いた骨伝導能の評価を行った。これによって、臼蓋コンポーネントの固定に開発中の酸化チタン含有骨セメントを用いた場合の優位性と安全性の評価が可能であると考えられる。 さらに、優れた長期成績が報告されているテーパー形状のセメントステムを用いた場合の酸化チタン含有骨セメントの安全性を評価するために、テーパー形状を有する模擬ステムを作成し、異なる2種類の市販骨セメントとともに、酸化チタン含有骨セメントのひずみに関する評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人工膝関節モデルの作成に時間を要した。さまざまな家兎用人工膝関節を考案したが、再現性のある実験をするのが困難と判断された為、家兎用のインプラントを作成することを断念せざるを得なかった。これは、家兎の膝関節可動域が広い上に小さい為に、インプラントを安定して母床骨に固定することが困難であった為である。しかし、人間に応用されている人工膝インプラントの初期安定性は骨セメントの種類に関係なく良好であると考えられ、経年的な変化としてセメントー骨界面での感染性、非感染性の弛みが問題となることから、関節面にセメントー骨界面を露出させたモデルを作成した。この評価を行うことにより、膝関節内で開発中の酸化チタン含有骨セメントを用いた場合の骨との接着性に関する優位性、安全性の評価が可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
高齢化社会を迎え、人工関節置換術のニーズは今後も高まるものと予想されるが、それに伴って、今後骨粗しょう症患者に対する人工関節置換術が増加してくることが予想される。セメント表面への骨伝導を促す酸化チタン含有骨セメントは、骨粗しょう症患者に用いた場合に、優れた骨固着性と、母床骨の骨密度維持が期待される為、それを証明する為に、日本白色家兎を用いた骨結合能評価を行っていきたいと考えている。具体的には、家兎に卵巣摘出手術と、ステロイド投与を行って、骨粗しょう症となった家兎を作成し、その大腿骨骨幹部に4箇所円筒形の骨孔を作成し、そこにあらかじめ硬化させた酸化チタン含有骨セメント、もしくは市販のPMMA骨セメントを埋入し、6,12,26週で屠殺し、組織評価、およびpush out法を用いた骨結合能の評価を行う。骨粗しょう症モデルにおける酸化チタン含有骨セメントの優れた骨結合能が明らかになれば、骨粗しょう症患者に対する人工関節置換術への応用が期待できる。 ビーグル犬に対する人工股関節置換術はすでに評価も終了しており、今後は結果をまとめて、発表、論文化する作業を順次行っていく予定である。家兎の膝への埋入試験については現在進行中であり、まだ予備実験の段階でもあるので、再現性を確認次第、実験N数を増やしていく予定である。
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