2016 Fiscal Year Research-status Report
局所麻酔薬中毒の中枢神経症状に対するLipid Rescueの作用機序の解明
Project/Area Number |
15K10516
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
村川 雅洋 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90182112)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 局所麻酔薬 / 副作用 / 中毒 / 痙攣 / 脂肪乳剤 / レボブピバカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
局所麻酔薬の重篤な副作用である心毒性に対して近年Lipid Rescueの有効性が動物実験や臨床報告で示されているが、中枢神経症状に対しては一定の見解が得られていない。脂肪乳剤の投与で中枢神経における局所麻酔薬の濃度の低下が起これば、抗痙攣薬の投与より根本治療となる可能性がある。本研究の目的は経静脈的に投与した脂肪乳剤が、局所麻酔薬によって誘発された痙攣を抑制できるかを検討し、抑制するとすればどのような機序に基づくのかを明らかにすることである。 本年度は、代表的な脂溶性局所麻酔薬であるレボブピバカインによって誘発される痙攣に対して、脂肪乳剤に抑制効果があるか否かを検討した。8~10週齢の雄性Sprgue-Dawley ratを使用し、脳表に脳波測定用の電極を植え込み、脳波を測定しながらレボブピバカイン6mg/kgを尾静脈からボーラス投与し痙攣を誘発した。レボブピバカイン投与後直ちに人工呼吸を開始し、尾静脈から20%イントラリピッド(リピッド群)または生理食塩水(生食群)を3ml/kg/minで5分間投与した。また、レボブピバカインの投与の前に20%イントラリピッドを3ml/kg/minで5分間事前投与した(リピッド前投与群)。各群10匹のラットで、それぞれ脳波上の痙攣波持続時間を測定した。 リピッド前投与群では10匹中9匹で痙攣が発生しなかった。痙攣時間(中央値(範囲))は、生食群145.5(117~225)秒、リピッド群143.5(109~209)秒、リピッド前投与群0(0~27)秒となり、リピッド前投与群は他の2群に比べて有意に短かった(p<0.001)が、リピッド群と生食群には有意差がなかった。 レボブピバカインによって誘発される痙攣に対して、前年度に検討したリドカインによる痙攣と同様に、脂肪乳剤は前投与では予防効果を示したが、痙攣発症後では治療効果がなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、各種の局所麻酔薬によって誘発される痙攣に対して、脂肪乳剤の効果を検証し、局所麻酔薬の脳内濃度の推移を検討する予定であったが、代表的で最も臨床使用頻度が高いと思われるリドカイン、レボブピバカインによる痙攣に対しての脂肪乳剤の抑制、治療効果の検討は行えたが、脳内濃度測定に用いる高速液体クロマトグラフィの検量線作成が不調であったため、その実験が行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり局所麻酔薬の高速液体クロマトグラフィによる測定の検量線作成と脳内濃度測定を進め、脂肪乳剤が局所麻酔薬の脳内濃度変化に影響を及ぼすか否かを検討する。さらに得られた成果を学術誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
高速液体クロマトグラフィによる局所麻酔薬の脳内濃度測定が計画通りに進まず、検量線作成の段階に留まっており、動物を使用する実験が行えなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、高速液体クロマトグラフィによる局所麻酔薬の脳内濃度測定を進め、検量線作成とともに、動物を使用する実験を行い、翌年度請求分の計画に合わせて使用する。
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