2016 Fiscal Year Research-status Report
三環系抗うつ薬中毒に対する脂肪乳剤の有効性-アルカリ化療法との比較検討
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15K10519
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
松浦 正 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (90619793)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 三環系抗うつ薬 / 脂肪乳剤 / 心筋Naチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
単離心室筋細胞を用いて、ホールセル・パッチクランプ法でNa+チャネル電流の記録を行った。アミトリプチリンによる心筋抑制の主因とされているNa+チャネル抑制を確認し、その抑制に対するアルカリ化液と脂肪乳剤の効果を検討した。ランゲンドルフ装置で摘出心をコラゲナーゼを含む溶液で灌流し、心室筋細胞を単離した。細胞外液・内液のNa+濃度は20.5mMと10mMに設定した。標準液・アルカリ化液のpHはそれぞれ7.35と7.55に調整した。また脂肪乳剤は標準液に溶解して、最終濃度が0.5-2%(リピッド液)になるようにした。膜電位-80mVに固定しステップパルスでNa+電流を記録し電流電圧曲線を作成した。-30mVの脱分極パルスで最大電流が得られたので薬剤の効果を調べる実験は-30mVの単一パルスで行った。 アミトリプチリンは濃度依存性にNa+電流を抑制し、IC50は0.39μMであった。アルカリ化液と1%リピッド液でIC50はそれぞれ0.75μMと3.2μMに上昇しアミトリプチリンによるNa+チャネル抑制を改善させた。0.5%リピッド液でもアルカリ液より有意にアミトリプチリンによるNa+チャネル抑制を改善させた。 アミトリプチリンによる心筋細胞Na+チャネル抑制にはuse-dependent blockの関与が大きい。1Hzで30回の連続パルスで刺激すると、1μMアミトリプチリン下で30回目のパルスではNa+電流は1回目の約50%に減少し、Use-dependent blockが確認された。アルカリ化液とリピッド液はともにuse-dependent blockを改善させ、その効果はリピッド液がアルカリ化液よりも著明に大きかった。 アミトリプチリンのNa+チャネル抑制に対する効果においても脂肪乳剤は、アルカリ化液よりも著明に大きな効果を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単離心室筋細胞を用いたパッチクランプによるNa+チャネルの記録を行った。アミトリプチリンによる心抑制の主因とされている心筋Naチャネル抑制に対するアルカリ化療法と脂肪乳剤の効果の比較検討を行った。計画していたパッチクランプの実験の大部分が終了した。ランゲンドルフ灌流心の先行実験の結果と同様に、脂肪乳剤の回復効果はアルカリ化療法よりも著明に大きかった。心室筋Naチャネル抑制に対する回復効果が、灌流実験での心機能回復に関連している可能性が示唆された。計画していたランゲンドルフ灌流心実験とパッチクランプ法によるNaチャネルでの検討がほぼ終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究内容としては実験の大部分を終えられた。現在までに得られたデータを解析し、さらに必要な実験があれば取り組む。それらをまとめて英文学術誌への投稿準備を開始する。
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Causes of Carryover |
米国シカゴで開催された米国麻酔科学会での研究発表に関連した旅費の一部を支出する予定であったが、旅費・宿泊・発表すべての行程を賄う場合にのみ科研費から支出できるという規約であた。これら全額を支出すると実験にかかる費用に不足が生じるので、学会出張は別の財源から補助を受けた。このため当初計画していた旅費の一部を次年度使用額として計上している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、研究結果をまとめて英文学術誌に投稿することを計画している。英文校正などそれに関わる費用が必要となる。また本研究で頻回に使用して劣化した実験器具の更新にも使用することを計画している。
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Research Products
(2 results)