2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K10531
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
福田 妙子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40228911)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 術後認知障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の研究実施計画ではオランザピンの効果測定を行う予定であったが、一定の割合で認知障害を起こす術後モデルが作成できなかったため、昨年提出した推進方策に従って術後認知障害モデル作成の見直しを行った。見直しの内容は、以下の3点の修正を中心とした。①手術から認知障害測定までのスケジュールの修正:従来の訓練後に手術を行う方法から、手術後に訓練を行う順番に変更した。手術方法は、リポポリサッカロイドの投与量をいくつか試したが最終的には、開腹手術に加え腸管のマニュピレーション5分間とリポポリサッカロイド0.1mg/kgの腹腔内投与のまま変更はしないこととした。②ラットの週齢を6週齢から6ヶ月に変更した。③認知機能の測定方法を水迷路試験から強制力の弱いバーンズ迷路に変更した。(バーンズ迷路は、直径約1.5mの円盤状のステージの端に20個の黒い円形の印があり、20個のうち1個のみ入り込める穴になっているもので、狭い場所に身を隠したがるラットの習性を利用して空間認知能力が測定できる。水迷路と異なり強制力が弱いので、僅かな認知機能低下を検知できると考えた。) これらの修正の結果、ラット60匹に実験を行い45匹の結果を得ることができた。手術後1週間目に行ったバーンズ迷路では、対照群に比べ手術群で有意にゴールまでの移動距離が長くなっている事が確認された。また、有意差は確認できなかったが、ゴールまでの時間においても同様の傾向が見られた。さらに新規物体に対する興味の示し方も対照群で高い傾向を示していたことから、当初の目的である、術後認知障害モデルの作成に至ったと判断している。ちなみにオープンフィールドで測定した移動速度では両群間に有意差はなく運動能力の差でないことは確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・バーンズ迷路の環境設定とトレーシングシステムの調整に時間を要した。 ・リポポリサッカロイドを使用するようになって、約20%のラットが死亡するので、実験の進行が遅れた。 ・ラットの訓練において短期集中で行うとラーニングカーブが急速に上昇して、僅かな認知障害が検出できなくなるので、週末を利用して少しずつ訓練を行う必要が生じ、その為実験スケジュールの修正と確立に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度分の遅れを取り戻すために以下の方策を取ることとする。 ①平成29年度予定のオランザピンの効果測定(疼痛行動、不安行動、うつ状態)と平成30年度予定のオランザピンの効果測定(記憶と認知能力)を平成30年度に同時に行う。②オランザピンの投与量は、少量群(1~5mg/kg)と大量群(5~10mg/kg)を想定しているが、プレテストを行いなるべく早期に適当量を設定する。生理食塩水投与群は省略し、平成29年度に行った開腹手術群を当てる。③Grimace scaleは今までの観察で、術後数時間で消失するため、本研究では省略とし、代わりにオープンフィールドでの移動速度と立ち上がり行動の計測で代用する。④不安行動は、手術前・術後1週間・2週間に行うオープンフィールドでの中央滞在時間で測定する。⑤うつ状態の測定は、ショ糖嗜好反応で見る予定であったが文献から甘い飼料の摂取状況で代用可能な事が分かったので、手術前に味を覚えさせた上で術後1週間・2週間に行うこととする。⑥記憶と認知能力については、Y-迷路や8方向放射状迷路試験の代わりに、引き続きバーンズ迷路で測定を行う。また新規物体に対する認識についても測定していくこととする。⑦平成31年度に予定しているArc cat FISH法での海馬の神経活動測定が難しい場合は、マイクログリアの集積状況など従来の免疫染色方法に切り替えることとする。
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Causes of Carryover |
オランザピンの効果を測定する予定であったが、その前段階の術後認知障害モデル作成で実験が足踏みしたため、想定より物品費が少なくなった。しかし、今年度は平成29年と平成30年度に予定していたオランザピンの効果測定を1年間で行う予定となったため、主に物品費として使用していく予定である。
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