2019 Fiscal Year Annual Research Report
Effects of Olanzapine on postoperative cognitive dysfunction
Project/Area Number |
15K10531
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
福田 妙子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40228911)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2020-03-31
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Keywords | 術後認知障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
今回の研究目的は、現在術後回復の大きな障害となっている術後認知障害の動物モデルを作成し、向精神薬オランザピンの効果を検証することにあった。比較的若年のラットで術後認知障害モデルを作成することは困難であったが、開腹手術と腸管操作及びリポポリサッカロイド(LPS)の組み合わせによって動物モデルを作成することができた。 具体的には、6ヶ月の雄ラットの腹部に3cmの切開を加え、腸管を引き出して5分間指で揉んだ後腹腔内に戻し、閉腹前にLPS単独かLPSとオランザピンを投与し、翌日に行動観察とバーンズ迷路を行って認知機能を評価した。オランザピン投与群は、バーンズ迷路試験において、LPS投与群より有意に好成績を示し、それは麻酔のみで手術を行わなかった対照群と同程度の成績であった。 このオランザピンの効果のメカニズムを知るため、海馬のミクログリアの活動性を免疫組織染色の手法を用いて調査したところ、オランザピンは有意に海馬におけるミクログリアの活動を抑制していた。一方で、血液中のサイトカインを測定したところ、LPS単独投与群との差は認められなかった。以上の結果から、オランザピンはサイトカイン発生を直接抑制するというよりは、二次的な神経炎症ダメージの抑制あるいは神経修復を加速するような働きを持つことが推測された。 今回の測定では、懸念されていた高血糖も観察されなかった。オランザピンには、鎮痛作用や鎮静作用があるので、今後術後認知障害を予防する薬剤の一候補となる可能性が示唆される結果となった。
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