2016 Fiscal Year Research-status Report
麻酔薬の一過性受容器電位(TRPC)チャネル抑制効果と心保護について
Project/Area Number |
15K10534
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
北川 裕利 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50252391)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マイクロダイアリシス / ミオグロビン / TRPCチャネル / 吸入麻酔薬 / 一過性受容器電位 / 心保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
吸入麻酔薬が心保護効果を有することは多くの検証により証明されているが、そのメカニズムはよくわかっていない。我々は細胞傷害の重要な因子の一つであるCa2+動態に着目し、Ca2+パラドックスと呼ばれる心筋虚血再灌流を模した細胞環境での傷害にTRPC(transient receptor potential canonical )チャネルが関与していることを報告してきた。本研究の目的はこの虚血再灌流によるTRPCチャネル活性化が麻酔薬による心保護効果に関与しているかどうかを検討し、麻酔薬の心保護メカニズムを明らかにすることである。さらに本結果を考慮した周術期心保護法を考案したいと考えている。 野生型ラットに心臓マイクロダイアリシス法を適応して、冠動脈閉塞開放時の心筋間質への逸脱タンパク質濃度を測定し、その濃度応答を細胞傷害の指標とした。研究1年目にはこの応答がTRPCチャネルブロッカーを前処置することで無処置群に比し抑制されることを確認した。さらに2年目である本年はTRPCチャンネル活性化ラット(実際にはTRPCチャンネルの過剰発現マウスの作成を目指してtransverse aortic constriction(TAC)手術を行った)を用いて、in vivoでの心筋虚血傷害時の修飾効果について検証してきた。このTAC術後ラットにおける冠動脈閉塞開放時の心筋間質逸脱タンパク質濃度は野生型ラットと同等であることを確かめた。現在はTRPCの拮抗薬(2-APB, SKF, Lanthanum)による虚血傷害修飾の違いについて検証しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラットにtransverse aortic constriction (TAC)手術を行うことでTRPCチャネル活性化ラットを作成した。現時点ではTAC術後ラットにおける冠動脈閉塞開放時の心筋間質逸脱タンパク質濃度は野生型ラットと同等であることを当初計画より1年遅れで確かめた。その後、TAC術後ラットのTRPCの拮抗薬(2-APB, SKF, Lanthanum)前処置による虚血傷害応答の違いについて取り組んできたところである。この2年間はTAC術後ラットの作成に最も多くの時間を要したが、計画に沿って進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は前年度に引き続いてTAC術後ラットでの冠動脈閉塞開放時の心筋間質逸脱タンパク質濃度応答をTRPC チャネルブロッカー(2APB, Gd3+, La3+)の前処置の有無で比較検討し、TRPCチャネルの関与について検討する。その後に吸入麻酔薬(セボフルラン、イソフルラン、デスフルラン)とTRPCチャネルブロッカーの併用投与による野生型とTAC術後ラットにおける冠動脈閉塞開放時の細胞傷害をマイクロダイアリシス法にてモニターし、麻酔薬の心保護メカニズムに迫りたい。
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Causes of Carryover |
予算執行上の端数として、次年度に計上した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
端数として、次年度の予算に組み入れる予定である。
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Research Products
(4 results)