2017 Fiscal Year Research-status Report
ヒドロキシエチルデンプン製剤が侵襲時glycocalyx構造におよぼす物理的作用
Project/Area Number |
15K10549
|
Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
多田羅 恒雄 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (30207039)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 1回拍出量変化量 / 血管収縮薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】高度侵襲を伴う大手術では、近年、1回拍出量変化量(SVV)を指標として輸液を行うことにより、心臓の前負荷を適切に保つことが推奨されている。一方、大手術中は、全身麻酔薬により血管が拡張するため、血管収縮薬を持続的に投与することにより、血圧を維持することが多い。しかし、血管収縮薬は静脈系を収縮させることにより、静脈かん流を増加させ、心臓の前負荷を増加させる。本研究では、肝切除において血管収縮薬の持続投与がSVVを指標とした輸液量に違いをもたらすかを検討した。 【方法】全身麻酔下、肝切除術を施行された51名の患者を対象とした。患者を無作為にコントロール群(C群)、フェニレフリン持続投与群(P群)、ノルエピネフリン持続投与群(N群)の3群(各17名)に割りつけた。手術開始から手術終了までSVV >12% となった時に4 ml/kgのヒドロキシエチルデンプン製剤をボーラス投与した。術中の総輸液量(ml/kg/h)を3群間で比較した。 【結果】術中の総輸液量は、3群間で有意な差を認めなかった(C: 7.3 [1.7]; P: 6.9 [1.5]; N: 7.2 [1.5], ml/kg/h, P=0.75). ボーラス終了時のSVV は、P群とN群はC群(12.3 [6.0] %, 90 boluses)にくらべて有意に小さかった (P: 10.3 [5.4] %, 87 boluses, P=0.02; N: 10.9 [3.9] %, 106 boluses, P=0.04)。 【考察】血管収縮薬の持続投与は、肝切除中の総輸液量に有意な差をもたらさなかった。今回、SVVを指標として輸液を行ったことから、この理由として、ボーラス終了時のSVV減少の違いがコントロール群にくらべてわずかであったことがあげられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血管収縮薬が大手術時の輸液量におよぼす影響を無作為化前向き臨床研究により検討することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
大手術時における血管収縮薬の投与が血管内皮グリコカリックスにおよぼす影響を無作為化前向き研究により明らかにする予定である。
|
Causes of Carryover |
現在、研究成果を海外雑誌に投稿中であり、次年度使用額を雑誌掲載のために使用する予定である。
|