2017 Fiscal Year Annual Research Report
Effects of neonatal pain on developing neuronal networks with epigenetic control
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15K10558
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野村 有紀 神戸大学, 医学研究科, 助教 (60643955)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 新生児期 / 疼痛 / 行動異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は新生児疼痛モデル動物として、腹膜切開および炎症性疼痛モデルを作製し、新生児期の疼痛がもたらす神経発達への影響として成熟過程における行動解析を行ってきた。本研究ではvonFreyテストおよびホットプレートテストにおいて有意な変化は認めず、新生児期の疼痛刺激による明らかな疼痛閾値の変化は示されなかった。また、学習機能評価のための行動解析としてY字迷路においても有意な差を認めなかった。一方で高架式十字迷路およびオープンフィールド試験では不安を伴わない有意な多動の傾向を見出した。各種神経発達に関連する遺伝子群について、その発現を解析したところ、 大脳皮質前頭前野周辺組織において、ミクログリアから産生される脳内炎症性メディエーター(TNFα)や、発達期の神経細胞形成に重要な役割を持つアストロサイト由来のTrombospondin-1、神経活動の指標となるc-fos遺伝子の発現低下を見出した。これらの発現変化に影響する因子として、エピジェネティックな制御が関与する可能性を検討したところ、脳組織から抽出したDNA解析においてグローバルなメチル化状態の違いは認められなかった。また発現変化を認めた個々の遺伝子について、DNAメチル化解析をバイサルファイトシークエンス法を用いて行ったところ、明らかなメチル化状態の違いは見出せなかった。一方で、ヒストンアセチル化レベルは減少傾向が示された。 本研究において、新生児期の疼痛刺激は、成熟後に後天的な多動性の後天的な行動変化をもたらす可能性が示唆された。またヒストンアセチル化に起因する遺伝子発現の変化をもたらし、神経発達期のグリア細胞および神経細胞のネットワーク機能に影響を及ぼす可能性が示された。
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