2016 Fiscal Year Research-status Report
侵害受容性、神経障害性、がん性の痛みに対する多角的治療の効果
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15K10559
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
溝渕 知司 神戸大学, 医学研究科, 教授 (70311800)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 痛み / 難治性疼痛 / 多角的治療 / βエンドルフィン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、異なる種類の難治性疼痛(侵害受容性、神経障害性、がん性)動物モデルに対し、複数の疼痛抑制機構を組み合わせて作用させることにより(痛みの多角的治療)臨床でいまだに治療が困難な難治性疼痛の新しい治療法を開発することを目的として研究を行っている。 動物モデルとしては、ホルマリンあるいはフロインドアジュバンド注入、足底切開による侵害受容性疼痛モデル、坐骨神経結紮による神経障害性疼痛モデル、骨へのがん細胞注入による骨がん性疼痛モデルを採用することとし、過去の研究での実績がありすべてのモデルの作成が可能であり、実績として、足底切開、神経結紮モデルを作成した。また、疼痛評価も可能な体制になっている。 一方、多角的治療としては異なる疼痛抑制機能の複合的な賦活を行うこと、すなわち、①脳神経由来成長因子(BDNF)の発現抑制による疼痛抑制、②内因性疼痛抑制物質βエンドルフィンの過剰発現による疼痛抑制、③Hyperpolarization-activated Cyclic Nucleotide-gated(HCN)チャネル機能抑制による疼痛抑制を計画しており、これまで検討し実績のある①に加え、昨年度は②に関する検討を重点的に行った。これまでの実績として、特に培養細胞においてはBDNFの発現をより効率的に抑制させるsiRNAを作成していること、およびエンドルフィンの効率的な発現方法を開発しつつあることが挙げられる。検討項目として研究課題で掲げた組織学的検討、RNA、蛋白レベルでの変化に関しては、主にRNAレベルでも発現で結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多角的方面からの難治性疼痛治療を目指しているが、BDNFの発現抑制およびβエンドルフィンの過剰発現に関しては検討されているものの、HCNチャネル機能抑制による疼痛抑制についてはまだ検討の段階に入っていない。また、がん性疼痛モデルの作成ではがん細胞の入手まで至らなかった。以上の点より、やや遅れていると評価した。 平成28年度に行った主なものとしては具体的に以下の進捗が挙げられる。。 16週齢ラット雌の視床下部より、βエンドルフィン(bEP)をクローニングした。本来、βエンドルフィンは大型ペプチド前駆物質であるプロオピオメラノコルチン(POMC)に由来する。生体内では何らかのストレス下でPOMCから切り出されて下垂体前葉からβエンドルフィンが分泌される。本研究ではβエンドルフィンをクローニングするにあたり、細胞外に分泌しやすいシグナルを付与する必要があると考え、神経成長因子(Nerve Growth Factor:NGF)を融合した遺伝子の作成を試みた。同じくラット視床下部よりNGFをクローニングし、NGFとbEP遺伝子の間には切断認識配列を挿入した、NGF-bEP融合遺伝子を作成した。細胞への遺伝子導入はタンデムに発現する蛍光タンパク質zsGreenを顕微鏡下に確認し、細胞外に分泌されたβエンドルフィンはELISAによって確認した。さらにアデノ随伴ウイルスベクターを作成し、細胞への感染により発現を確認したが、mRNAレベルでは確認ができたもののタンパク質レベルでの発現が検出限界を下回り、より精製度の高いウイルスベクターの作成が必要と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
神経障害性痛モデル動物の作成についてはすでに着手しており、マウスでの脊髄神経結紮モデル作成および疼痛閾値の評価を行っており、今後は脊髄神経結紮モデルマウスのクモ膜下腔へのBDNF発現抑制およびβエンドルフィン発現アデノウイルスベクター投与を行い、疼痛閾値の変化を検討する予定である。また、足底切開による侵害受容性疼痛モデルおよび骨性がん性痛モデルも作成し異なった痛みの病態への効果を検討する予定である。さらに、他大学での研究者よりHCNチャネル抑制による疼痛抑制効果の手法を学ぶことを考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)以下の点が挙げられる。 ①試薬などの調達方法の工夫などにより当初の計画より経費が節約できたこと、②本研究課題に費やす時間が十分にとれたとは言えず、HCNチャネルに関する研究課題やがん性疼痛モデルの作成を行うことができず当初予定していた研究計画のすべてを完遂できなかったこと、③研究成果報告を予定していた海外学会に参加しなかったこと、④研究図書の購入が予定より少なかったこと
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に計画していたができなかったHCNチャネルに関する研究や、がん性疼痛モデルの作成及び各種疼痛動物モデルへの治療法導入に使用する予定である。
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