2015 Fiscal Year Research-status Report
ファーマコゲノミクスとトランスクリプトミクスによる腎癌薬物療法の新治療体系の確立
Project/Area Number |
15K10573
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
土谷 順彦 山形大学, 医学部, 教授 (70282176)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 伸太郎 秋田大学, 医学部, 講師 (40396552)
黄 明国 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60448503)
藤山 信弘 秋田大学, 医学部, 助教 (90603275)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 腎細胞癌 / 分子標的薬 / 血中濃度 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ファーマコゲノミクスを用いた分子標的薬の薬物動態・薬力学的研究: アキシチニブ(AXT)投与中の患者における薬物代謝関連遺伝子と薬物動態ならびに治療効果・有害事象との関連を検討した。対象はAXTで加療された進行性腎細胞癌患者31例(年齢中央値66歳)。AXT投与7日目に薬物動態検査を行い、患者末梢血から抽出したゲノムDNAを用いて薬物関連遺伝子多型をタイピングした。さらに、治療後の有害事象と臨床効果を追跡調査した。これまでの解析では、AXTの血中濃度と関連を有する遺伝子多型は見つからなかった。一方、AXTのトラフ濃度と腫瘍縮小効果は有意に関連し(P=0.043)、高血圧、蛋白尿、甲状腺機能低下症の発症とも有意に関連していた(P=0.037、P=0.024、P=0.027)。また、AXTのトラフレベルが高井症例では無増悪生存が長い傾向が認められた(P=0.069)。 2)トランスクリプトミクス解析による治療効果予測マーカーの探索研究: AXT投与中の進行性腎癌患者血清中のmicroRNA(miRNA)や増殖因子等の血清蛋白の発現と予後との関連を解析し、AXTの治療効果を予測するバイオマーカーとしての有用性を検討した。対象は進行性腎癌の診断でAXTを投与した16例(年齢中央値66歳)。AXT投与前後の血清からmiRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCR(Taqman probe法)でmiR-21、miR-155、miR-210、miR-378の相対量を測定した。血清蛋白はBio-Plex Pro™ Human Cancer Biomarker Panel 1、 16-plexを用い、AXT投与前後の血清中の16種類の蛋白の定量を行った。AXT投与後にmiR-21の発現が低下した群で有意に無増悪生存期間が延長していた(P=0.032)。AXT投与前のHGF、sIL-6R、PECAM-1濃度が中央値より高い群で有意に無増悪生存期間の延長がみられた。(P=0.043、 P=0.033、 P=0.002) 。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ファーマコゲノミクスを用いた分子標的薬の薬物動態・薬力学的研究: アキシチニブ(AXT)の血中濃度側底に関して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた測定系を確立したことから、これまで採取した多くの検体からの血中濃度を安定して測定可能となった。薬物動態に関してはこれまで得られた31症例分の解析が進行中であり、有害事象や臨床効果との関連性が認められる結果が得られており、おおむね順調に進捗している。次年度以降にさらに詳細な解析結果が得られる予定であり、長期の経過観察によりより信頼のおける結果が得られると考えている。 2)トランスクリプトミクス解析による治療効果予測マーカーの探索研究: 初年度には16例と少数例ながらも、いくつかのエクソソームmiRNAや血中のサイトカイン、増殖因子とAXTの治療効果との関連性が認められてあり、おおむね予定通りに進捗していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)ファーマコゲノミクスを用いた分子標的薬の薬物動態・薬力学的研究: 薬物関連遺伝子多型と血中濃度の関連に関する検討(ファーマコゲノミクス)は不十分な状況である。次年度以降はさらに検討する症例と遺伝子多型を増やして解析を行う。 2)トランスクリプトミクス解析による治療効果予測マーカーの探索研究: 次年度以降は、対象症例を増やし、測定するmiRNAや血中のバイオマーカーの対象を追加することを検討している。 3)薬物動態・腫瘍進展に影響を及ぼすトランスクリプトミクスの基礎的研究: 今年度の研究により、AXTの臨床効果を反映するいくつかの候補miRNAが得られており、平成29年度以降にこれらの生物学的意義を分生物学的な手法を用いて検討することを計画している。
|
Causes of Carryover |
薬剤関連遺伝子多型解析の一部が本年度中に施行できなかったため、物品費に残額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の繰越金は研究成果で不十分な薬物関連遺伝子多型の追加解析のための費用として次年度に使用する。
|
Research Products
(1 results)