2015 Fiscal Year Research-status Report
尿路上皮癌に対する腫瘍内免疫応答の解析と自己ガンマデルタT細胞療法の開発
Project/Area Number |
15K10577
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 徹 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40591730)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久米 春喜 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (10272577)
垣見 和宏 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80273358)
松下 博和 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80597782)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 免疫療法 / 癌精巣抗原 / ネオアンチゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、尿路上皮癌における免疫療法のバイオマーカーの探索とγδT細胞投与による新規治療法の開発をめざしている。 初年度は、免疫学的な抗腫瘍機序のターゲット探索を目的として、上部尿路原発の尿路上皮癌171症例を用いた免疫組織学的な検討を行った。癌精巣抗原の一つであるMAGE-Aの発現は、腫瘍周囲の微小環境におけるCD3陽性T細胞・CD8陽性T細胞・CD45RO陽性T細胞の浸潤と有意に相関したが、CD20陽性B細胞とは相関しなかった。MAGE-A発現症例の予後は不良であり、MAGE-Aは尿路上皮癌の予後マーカーとなりうると同時に、免疫学的な抗腫瘍機序のターゲットとなる可能性を示し、これらの結果をHuman Pathology誌に発表した。 また、近年の免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験において、長期にわたり持続する強い抗腫瘍効果が得られる患者にはもともと内因性の免疫応答が存在していたことが、最近明らかになっている。また、免疫チェックポイント阻害剤により活性化された免疫応答の標的は、腫瘍特異的な遺伝子変異由来の新生抗原(ネオアンチゲン)である可能性が高くなってきた。そこで、我々は既に発表した腎細胞癌の次世代シーケンサー解析データをもとに、ネオアンチゲンを同定するシステムを構築し、その結果をCancer Immunol Res誌に発表した。 また、γδT細胞治療の臨床試験に向けて、患者末梢血中のγδT細胞の増殖能を比較し、CD45RA++CD27-のフェノタイプを持つγδT細胞は増殖能を喪失しているため、治療に用いる細胞の培養が困難であることを明らかにした。予め、患者末梢血中のCD45RA++CD27-以外のγδT細胞の有無によって、治療可能な患者を選択する事が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行され、再生医療等の迅速かつ安全な提供等を図るため、再生医療等を提供しようとする者が講ずべき措置を明らかにするとともに、特定細胞加工物の製造の許可等の制度等が定められた。本研究で実施する「自己γδT細胞治療」は、第三種再生医療等技術に分類されるため、臨床研究を開始するための体制の整備が必要である。まず、特定細胞加工物製造届けを関東信越厚生局に届けたうえで、本学の認定再生医療等員会において再生医療等提供計画の審査を受け、関東信越厚生局に届けることが求められている。これらの対応のために、臨床研究の準備が予定より遅延している。 一方、研究面では、Hum Pathol誌およびCancer Immunol Res.誌への論文発表が示すとおり、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
東京大学医学部附属病院において根治的膀胱全摘術を実施した膀胱癌患者240名・腎盂尿管癌に対して腎尿管全摘術を実施した171名の患者の臨床検体を用いて、摘出組織のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)を用い、浸潤胞巣の中心部と先進部などの特徴的な部位を選択して薄切スライドを作成し、IHCをおこなう。CD3, CD4, CD8, CD45RO, CD57(NK cell), CD123(dendritic cell),CD66b(neutrophil), CD163/CD204(tumor-associated macrophage), FOXP3,PD-1.などの発現を解析する。 膀胱がんの次世代シーケンサー解析から腫瘍特異的体細胞変異の同定、さらに患者のHLAに合わせてネオアンチゲンを同定し、バイオマーカーとしての意義を検討する。
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[Journal Article] MAGE-A expression, immune microenvironment, and prognosis in upper urinary tract carcinoma.2016
Author(s)
Makise N, Morikawa T, Nakagawa T, Ichimura T, Kawai T, Matsushita H, Kakimi K, Kume H, Homma Y, Fukayama M.
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Journal Title
Human Pathology
Volume: 50
Pages: 62-69
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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