2015 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレス防御因子を標的とする抵抗性前立腺癌治療薬の開発
Project/Area Number |
15K10601
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
井口 和弘 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (10295545)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 俊之 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (80306274)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 22Rv1細胞 / LNCaP細胞 / フルタミド / ビカルタミド / エンザルタミド |
Outline of Annual Research Achievements |
前立腺癌の薬剤抵抗性につながる酸化ストレス防御因子を明らかにする目的で、本年度は薬剤耐性前立腺癌細胞株を樹立するとともに、各種酸化ストレス防御因子の発現量を測定した。 まず、アンドロゲン受容体陽性前立腺癌細胞株22Rv1を用いて、各種抗アンドロゲン剤(フルタミド、ビカルタミド、エンザルタミド)に対して耐性を示す細胞株(22Rv1/FL、22Rv1/BIC、22Rv1/ENZ)を樹立した。これらの抗アンドロゲン剤耐性細胞株と既に樹立済みのLNCaP/FL細胞(フルタミド耐性アンドロゲン受容体陽性前立腺癌LNCaP細胞)について、アンドロゲン受容体および酸化ストレス防御因子の遺伝子発現量をRT-PCR法により測定した。その結果、各抗アンドロゲン剤耐性株はそれぞれの親株に比べ、アンドロゲン受容体の発現量の上昇が認められた。さらに、耐性株において、アルデヒド解毒酵素(aldo-keto reductase (AKR)1Cサブファミリー酵素AKR1C1、AKR1C2、AKR1C3)、ヘムオキシゲナーゼ(HO1)、NAD(P)H キノン還元酵素(NQO1)の発現上昇が観察された。また、ウェスタンブロット法により、酸化ストレス防御因子の発現制御に関わる転写因子Nrf2が核に移行していることが確認され、Nrf2が恒常的に活性化していることが示唆された。すなわち、抗アンドロゲン剤耐性獲得によりNrf2の恒常的活性化が引き起こされ、各種酸化ストレス防御因子の発現上昇に至ったことが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまでに樹立した耐性株に加え、アンドロゲン受容体陽性前立腺癌細胞株22Rv1を用い、フルタミド、ビカルタミド、エンザルタミドのそれぞれに対して耐性を示す細胞を樹立し、その性状の解析にまで至った。これらの細胞株の樹立と解析は、当初の実験計画以上の進展であった。また、各種酸化ストレス防御因子の発現量について、遺伝子レベルでの測定結果が得られた一方、一部の因子のタンパク質レベルでの評価は検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
酸化ストレス防御因子の発現上昇機序の更なる解明のために、酸化ストレス抵抗性と小胞体ストレスとの関連性を調べる。すなわち、各種進行前立腺癌細胞株における酸化ストレス防御因子発現量の評価を継続し、加えて、これらの細胞株でのストレス抵抗性獲得機序の解析を行う。具体的には、小胞体ストレスマーカーの発現およびプロテアソーム活性を測定する。さらに、標的候補因子の発現抑制実験を行い、抗アンドロゲン剤耐性前立腺癌細胞の抑制に関する候補因子の選定を予定している。
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Causes of Carryover |
ウェスタンブロットによる解析に至っていない因子があり、当初予定していた消耗品の購入をしなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
抗体、試薬等の購入費として使用する。
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