2015 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌におけるアンドロゲン応答機構の解明とそれを制御する新規治療薬の開発
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15K10610
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高橋 悟 日本大学, 医学部, 教授 (50197141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 健哉 日本大学, 医学部, 准教授 (00297813)
浦野 友彦 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20334386)
福田 昇 日本大学, 付置研究所, 教授 (40267050)
藤原 恭子 日本大学, 医学部, 助教 (40595708)
芦苅 大作 日本大学, 医学部, 助手 (70748053)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 前立腺癌 / アンドロゲン / 去勢抵抗性 / ドセタキセル抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前立腺癌細胞増殖とドセタキセル抵抗性に関与する遺伝子として我々が既に同定している Abhydrolase domain-containing protein 2 (ABHD2) 遺伝子につき、ゲノム構造解析およびこの遺伝子がコードしている蛋白質の機能解析を行った。アンドロゲン受容体(AR)陽性前立腺癌細胞株LNCaPを用いたChip-sequence の結果、ABHD2の2か所のイントロン内にアンドロゲンによってアセチル化ヒストンのシグナルが増強する領域が確認され、その近傍にアンドロゲン応答領域が存在することを見出した 。さらにLNCaP、AR陽性前立腺癌細胞株VCap並びにAR陰性前立腺細胞株PC3にアンドロゲンを投与して刺激を行い、ABHD2の発現量を定量したところ、PC3以外の細胞においてアンドロゲン依存性に発現が上昇することが確認できた。これらの結果より、 同領域が機能的なアンドロゲン応答配列であることが示唆された。 そこで、ABHD2を安定発現するLNCaP を樹立し、細胞機能についての検討を行ったところ、LNCaP細胞はコントロール細胞と比較して遊走能並びに増殖能が有意に亢進することが確認できた。さらに、我々が新規に開発したABHD2特異的siRNA(国際公開番号: WO2016/027701)を用いて、LNCaP並びにVCaPにおけるABHD2の発現抑制を試みたところ、 アポトーシスの誘導、遊走能・浸潤能の低下が認められた。以上の結果より、ABHD2は前立腺癌の悪性化に関与していること、加えて前立腺癌の治療標的として非常に期待できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前立腺癌細胞増殖とドセタキセル抵抗性に関与する遺伝子として我々が既に同定している新規アンドロゲン応答遺伝子ABHD2が、実際にそのゲノム中にアンドロゲン応答配列を持つ事を確認し、さらにABHD2が前立腺癌の増殖、遊走・浸潤、抗癌剤耐性の維持において重要な役割を果たすことが証明できたため、本研究は順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
アンドロゲン応答遺伝子 ABHD2が前立腺癌細胞のドセタキセル抵抗性獲得およびアンドロゲン応答機構にどのように関与するか詳細な分子メカニズムを解明するために、下記の通り、網羅的発現解析を用いて、この遺伝子の下流を探索する。siRNA による発現抑制もしくは過剰発現により、前立腺癌細胞におけるこの遺伝子の発現レベルを変化させ、その結果発現状態が変化する遺伝子群をマイクロアレイにてスクリーニングする。オントロジー解析等から、重要であると予想される遺伝子についてはqRT-PCRにより発現レベルを再確認後、そのアンドロゲンシグナル伝達系における役割や、相互作用について解析を行う。続いて、ABHD2の転写調節領域に対し、配列特異的DNA結合能を持つピロール・イミダゾール(PI)ポリアミド分子を設計し、これらの転写抑制を試みる。また、すでに我々が開発したAR転写調節領域に作用するポリアミドの同遺伝子への効果も検討する。標的領域への特異的な結合および核内移行が確認できた場合は、PIポリアミドの前立腺癌細胞株に対する抗腫瘍効果を培養系において解析し、同化合物の新規前立腺癌治療薬としての可能性を検討する。
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Research Products
(3 results)