2015 Fiscal Year Research-status Report
テストステロンによる虚血性心脈管障害の増悪機構の解明
Project/Area Number |
15K10644
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
坂梨 まゆ子 琉球大学, 医学研究科, 助教 (80363662)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 俊博 琉球大学, 医学研究科, 助教 (50244330)
筒井 正人 琉球大学, 医学研究科, 教授 (70309962)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | テストステロン / 虚血性心血管疾患 / 心筋梗塞 / 一酸化窒素合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】本研究は、男性ホルモンtestosteroneが生体内の一酸化窒素(NO) 産生低下時に虚血性心血管疾患を増悪させる機序の解明を目的とする。平成27年度は、NO産生の低下した心筋梗塞モデルマウスにおいて、testosteroneが心筋梗塞の危険因子におよぼす影響を検討した。 【方法】3種類の NO 合成酵素をすべて knockout (KO) した 雄性NOS 系完全欠損マウスの腎臓を2/3摘出し、NO産生の低下した心筋梗塞モデルマウス(2/3Nx-n/i/eNOS KO)を作成した。これらマウスに対して精巣摘出術または偽手術を施し、精巣摘出によるtestosteroneの減少が、マウスの生存率におよぼす影響を比較検討した。また精巣摘出群のマウスを2群に分け、一方には徐放性testosterone tube、他方には空tubeを皮下埋込し、testosterone投与が精巣摘出による生存率の変化におよぼす影響を検討した。さらに術後4週目のマウスの血液を採取し、心筋梗塞の危険因子におよぼす影響を比色法により検討した。 【結果】精巣摘出した2/3Nx-n/i/eNOS KOマウスでは、偽手術2/3Nx-n/i/eNOS KOマウスの生存率に比して、有意な改善を認めた。一方、精巣摘出2/3Nx-n/i/eNOS KOマウスにtestosteroneを投与したところ、未投与群に比して生存率の低下傾向を認めた。精巣摘出ならびに偽手術2/3Nx-n/i/eNOS KOマウスの心筋梗塞の危険因子として血中脂質を測定した結果、総コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪値に有意な変化を認めなかった。血糖値についても同様の結果であった。一方、精巣摘出2/3Nx-n/i/eNOS KOマウスにtestosteroneを投与すると、未投与群に比して中性脂肪値の有意な増加を認めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で使用するNOS 系完全欠損マウスは、所属講座で作製したノックアウトマウスであり、他機関からの入手はできない。平成27年度の夏、台風の影響で当該マウスの繁殖にトラブルが生じマウスの供給が著しく減少したことから、一時的な研究の遅れが生じた。そこで、3年間の研究計画において後半に実施を予定していた長期飼育の実験を先に開始することにより、研究遅延への対応を図った。具体的な対応としては、マウスの供給が少ない時期には、精巣摘出2/3Nx-n/i/eNOS KOマウスへのtestosterone投与による生存率測定など、サクリファイスを伴わない実験を行った。 現在はマウスの繁殖が正常化し、実験への供給数も安定したことから、術後1ヶ月のマウスのサンプリングに着手している。以上より、当初の計画よりやや研究の遅延が生じたものの、現在はおおむね順調に進展しはじめたと自己評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、第一に2/3Nx-n/i/eNOS KOマウスの術後1ヶ月の心筋組織傷害の評価を行う。具体的には、心筋梗塞時に遊離される心筋逸脱酵素である心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)の測定を計画しており、現在サンプリングを行っている最中である。また、心筋組織の酸化ストレス状態を生化学的に評価するために、チオバルビツール酸反応物の測定も併せて行う予定である。 第二に、心筋梗塞の危険因子におよぼす影響のうち、血圧調整に関係する要因の解明を行う。心筋梗塞モデルマウスでは、予備実験より高血圧を呈することが判明していることから、2/3Nx-n/i/eNOS KOマウスの血液サンプルを採取し、血漿レニン活性ならびに血漿アンジオテンシンIIレベルの測定を予定している。 第三に、心筋梗塞による血管傷害の評価を行う。具体的には、2/3Nx-n/i/eNOS KOマウスの摘出血管の血管反応性を、マイクロオーガンチャンバーを用いて薬理学的に評価する予定である。
|
Causes of Carryover |
現在までの進捗状況にも記載したように、平成27年度は一時的に実験に使用可能なマウスの供給が激減したことから、サクリファイスを伴わない実験に変更する必要が生じた。そのため、摘出臓器や血液を用いた測定実験をすべて平成28年度に行うこととなり、消耗品の購入の延期が生じた。 また、マウスの供給安定後には、モデルマウス作製のための手術が立て込み、研究打合せの出張を中止せざるを得なかったため、旅費として計上した予算を使用しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、前年度中に購入予定であった消耗品(ELISAキット、1次抗体、2次抗体、プライマー各種 等)の発注を予定している。さらに一部血液検査の外注と、新たに開始する血管反応性の実験に向けて、手術器具(O-リングピンセット、マイクロピンセット、スプリングハンドル式剪刀 等)の購入を予定している。
|