2015 Fiscal Year Research-status Report
羊膜細胞のアクチビン産生 - FIRSの治療法開発への応用を目指した研究 -
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15K10658
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
安部 由美子 群馬大学, 保健学研究科, 准教授 (70261857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
峯岸 敬 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00209842)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アクチビン / フォリスタチン / インヒビン / 炎症性サイトカイン / TNF-α / 羊膜細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症により上昇することの報告されているactivin Aは、2つのinhibin/activin βA subunit(INHBA)から構成される二量体である。ヒト羊膜上皮細胞で、炎症性サイトカインTNF-α刺激によるINHBA発現亢進に関与シグナル伝達系の解析を行った。TNF-αによるp38 MAPKの活性化を認め、p38 MAPK inhibitorはTNF-α刺激により亢進したINHBA mRNA発現を抑制したことより、TNF-αによるINHBA mRNA発現亢進にMAPKシグナル伝達系が関与している可能性が考えられた。また、TNF-αによりIκBαの分解とp65のリン酸化を認め、IKKβ inhibitorはTNF-αにより亢進したINHBA mRNA発現を抑制したことから、羊膜上皮細胞におけるTNF-αによるINHBA mRNA発現亢進の少なくとも一部はNFκBシグナル伝達系を介した作用である可能性が考えられた。一方、INHBAの近位プロモーター領域を組み込んだvectorを用いた Dual-Luciferase Reporter Assayでは、TNF-αによるINHBAの有意な転写活性亢進は見られなかったが、この結果はこの領域にNFκB応答配列が存在しないことと矛盾せず、発現亢進には別の領域が関与している可能性が考えられた。 構築したELISAによる培養上清の測定で、一名の妊婦から得た羊膜上皮細胞で、TNF-α刺激による時間依存的なfree activin Aの増加がみられた。この反応が羊膜上皮細胞に普遍的にみられる現象であるか否かを、他の妊婦からの羊膜上皮培養細胞を用いて2016年度に明らかにする予定である。一方、羊膜間葉系培養細胞では対照群との差を認めず、羊膜上皮細胞と間葉系細胞ではactivin Aとactivin 結合蛋白質の合成分泌機序が異なる可能性が考えられた。羊膜上皮細胞と間葉系細胞の相違についても、他の妊婦からの羊膜細胞を用いて2016年度に明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究実施計画1)ヒト羊膜細胞のactivin遺伝子発現・activin蛋白質の解析(1)転写活性とシグナル伝達系の解析、(2)Activin A蛋白質の解析、について当初計画していた研究を実施した。(1)については、炎症性サイトカインTNF-αによるヒト羊膜上皮細胞におけるINHBA 遺伝子発現亢進の少なくとも一部にMAPKシグナル伝達系が関与している可能性を明らかにした。また、平成28年度以降の解析を予定していたMAPK系以外のシグナル伝達系についても、TNF-αによるヒト羊膜上皮細胞におけるINHBA 遺伝子発現亢進の少なくとも一部はNFκBシグナル伝達系を介した作用である可能性を明らかにした。また、INHBAの近位プロモーター領域を組み込んだvectorを用いた転写活性解析を行った。TNF-αによる転写活性亢進はみられず、発現亢進には別の領域が関与している可能性が考えられた。更に、平成28年度以降の実施を予定していたimmunocytochemistryによる解析も一部を開始することができた。(2)については、一名の妊婦から得た羊膜上皮細胞と羊膜間葉系細胞を用いて、構築したELISAにより培養上清中のfree activin A蛋白を測定した。TNF-α刺激により羊膜上皮細胞free activin A分泌が増加していた。一方、平成27年度の研究実施計画2)羊水中のactivinの解析、については、一部、実施できなかった研究がある。すなわち、抗inhibin-α subunit抗体結合樹脂の準備はできたが、臨床研究に関する指針の変更に対応した申請書・実施計画書の作成と承諾の取得が年度内に行えず、ヒト羊水を用いた解析は、倫理委員会の承諾を得て平成28年度に行うこととした。以上より、2)は実施計画よりやや遅れているが、1)は実施計画より進んでおり、全体としてはおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、主に、交付申請書の「平成28年度の研究実施計画」に記載した研究を推進する。すなわち、以下の研究を進める。1)ヒト羊膜細胞のactivin遺伝子発現・activin蛋白質の解析: (1)TNF-αによるINHBA mRNA発現に関与するMAPK系以外のシグナル伝達系についても解析を進める。(2)絨毛膜羊膜炎で羊水中の濃度が上昇することの報告されているTNF-α以外の炎症性サイトカインについても、これらの刺激時のヒト羊膜培養細胞におけるINHBA mRNA発現について解析する。(3)特異性のより高いhuman free activin A ELISAの構築と、immunocytochemistryによる解析を行う。2)羊水中のactivinの解析。2)については、新指針に対応した申請書・実施計画書によりヒト羊水を用いた研究の承諾を得て、構築したhuman free activin A ELISAの測定条件をヒト羊水中activin A測定に最適化し、羊水中のactivin Aを測定する。 平成29年度は、交付申請書の「平成29年度の研究実施計画」に記載した研究、1)ヒト羊膜細胞のactivin遺伝子発現・activin蛋白質の解析、2)Activin結合蛋白質follistatin、FSTL3の羊膜細胞に対する作用、3)羊水中のactivinの測定結果の解析:羊水中のactivin測定結果と羊水を採取した患者、胎児、出生後の児の臨床データーを解析し、activinと、FIRSの病態との関係を明らかにする、を進め、平成27年度~平成29年度の研究結果を総合してFIRSの新規診断・治療法を考案する。
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Causes of Carryover |
RT-qPCRによるINHBA mRNA発現解析が、従来法の1/2量のqPCR反応系で従来法と同程度の感度と精度が得られたため、1/2量のqPCR反応系で測定した。このため、用いる培養細胞数、細胞培養用器具・試薬量、RNA抽出用試薬量、RT反応用試薬量を当初の計画より減らすことができ、これらの購入に予定していた費用が削減され、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は研究補助者による補助の必要性が増大するため、生じた次年度使用額は研究補助者への人件費・謝金に充てる予定である。また、炎症性サイトカインとimmunocytochemistryに使用する抗体の価格が高騰しているが、これらは研究に必要な試薬であるため、次年度使用額の一部は、これらの購入に充てることを計画している。
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Research Products
(9 results)