2016 Fiscal Year Research-status Report
羊膜細胞のアクチビン産生 - FIRSの治療法開発への応用を目指した研究 -
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15K10658
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
安部 由美子 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (70261857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
峯岸 敬 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00209842)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アクチビン / インヒビン / フォリスタチン / 炎症性サイトカイン / TNF-α / 羊膜細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
FIRSの主因である絨毛膜羊膜炎の大部分は上行性感染により生じる。組織学的絨毛膜羊膜炎の分類では、炎症が絨毛膜までに留まるステージ(Blanc分類stage I~II)に比べ、炎症が羊膜まで及んだステージ(Blanc分類stage III)では、臨床的にもより重篤で、治療も奏功し難いことが知られている。このため、本年度は、羊膜細胞の中でも、絨毛膜に近い羊膜間葉系細胞と、最内層に位置する羊膜上皮細胞の各々を対象としてactivin産生を解析した。絨毛膜羊膜炎の羊水中では、IL-6やIL-8などの炎症性サイトカインが増加することが知られているが、一次性炎症性サイトカインでは、TNF-αとともにIL-1が上昇することが報告されている。これまで、TNF-α刺激によりINHBA mRNA発現とactivin A蛋白合成・分泌が羊膜上皮細胞で増加することを明らかにしてきたが、この現象がTNF-αに特異的な現象では無く羊膜の炎症において普遍的にみられる現象であることが推測されたため、IL-1刺激時のINHBA mRNA発現、activin の作用を負に制御するinhibin, follistatin、FSTL3のmRNA発現、およびactivin A蛋白合成・分泌について解析した。一方、昨年度までactivin A産生の解析に用いてきたELISAでは、固相化抗体としてinhibin Aを免疫したヤギ血清からimmunoaffinity purificationにより得たポリクローナル抗体を用いていたが抗体量が限られていた。このため、本年度は、新たに抗ペプチド抗体を作製し、これを固相化抗体とするELISAを構築してactivin A合成・分泌の解析に用いた。この結果、羊膜細胞は、上皮細胞、間葉系細胞ともにTNF-αのみならずIL-1β刺激によりINHBA mRNA発現とactivin A蛋白合成・分泌を増加させるが、両細胞のIL-1β刺激に対する反応パターンは異なることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究では、絨毛膜羊膜炎で羊水中の濃度が上昇することの報告されているTNF-α以外の炎症性サイトカインについても、ヒト羊膜培養細胞におけるINHBA mRNA発現に対する作用を解析することが計画されていた。このため、羊水中の濃度上昇が報告されており、かつ、TNF-αと同様、一次性炎症性サイトカインであるIL-1βについてINHBA mRNA発現に対する作用を解析し、IL-1βがヒト羊膜上皮細胞とヒト羊膜間葉系細胞のいずれの細胞においてもINHBA mRNA発現を促進するが、その発現促進パターンは両細胞で異なることを明らかにした。更に、activin結合蛋白質follistatin、FSTL3のmRNA発現についても解析し、両細胞において、TNF-α刺激、IL-1β刺激ともに、INHBA mRNA発現の上昇に比べてfollistatin、FSTL3のmRNA発現の変化はわずかであることを明らかにした。 一方、昨年度の「今後の研究の推進方策」では、activin A ELISAの改良が計画されており、これについて以下の研究を行った。すなわち、これまで用いてきたELISAでは、固相化抗体はinhibin Aを免疫したヤギ血清からimmunoaffinity purificationにより得たポリクローナル抗体であり、抗体量が限られていた。このため、本年度は、新たに抗ペプチド抗体を作製し、これを固相化抗体とするELISAを構築した。また、ELISAによる羊水中のactivinの解析については、倫理委員会申請用の申請書・実施計画書を作成したが、現在、産科側の担当医と臨床の現実に即した計画書に修正中で、近日中に修正、申請し、倫理委員会の承認を得て羊水中のactivin解析を行う予定である。以上より、羊水中のactivin解析は実施計画より遅れているが、follistatin、FSTL3の解析は平成29年度に行う予定であった研究の一部を本年度に行ったものであり、全体としてはおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、平成28年度からの継続の研究と、交付申請書の「平成29年度の研究実施計画」に記載した研究を推進する。すなわち、以下の研究を進める。 1)ヒト羊膜細胞のactivin遺伝子発現・activin蛋白質の解析:ヒト羊膜培養上皮細胞とヒト羊膜培養間葉系細胞を用いて炎症性サイトカインTNF-αとinterleukinsのactivin A発現に対する作用とシグナル伝達系について解析する。Activin A蛋白合成については、平成28年度に作製した抗体を用いたimmunocytochemistryと、平成28年度に作製したELISAにより、炎症性サイトカイン刺激時の羊膜細胞のactivin合成を解析する。 2)Activin結合蛋白質follistatin、FSTL3の羊膜細胞に対する作用:FollistatinとFSL3は生体内に存在する蛋白質であり、activinに結合することにより、activinのreceptorへの結合を阻害し、activin作用を中和する。また、敗血症モデル実験動物ではfollistatin投与による生存率の改善が報告されており、FIRSにおいて羊水中への投与による治療の可能性が考えられる。このため、羊膜細胞培養系を用いて、follistatin、FSTL-3の羊膜細胞に対する作用を解析する。 3)羊水中のactivinの測定と結果の解析:羊水中のactivin Aを測定し、測定結果と羊水を採取した患者、胎児、出生後の児の臨床データーを解析し、activinと、FIRSの病態との関係を明らかにする。 4)平成27年度と平成28年度の研究成果および平成29年度の1)~3)の研究結果より、FIRSの新規診断・治療法を考案する。
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Causes of Carryover |
ELISAの検討に再利用可能なremoval wellを用いることができたため、新たにmicroplateを購入する必要が無くなり経費が削減された。細胞培養に用いていた器具・試薬類の一部について、これまで用いていた器具・試薬類とは異なるメーカーの物でも研究遂行に差し障りが無いことが判り、より廉価な器具・試薬類に変更したため経費が削減された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
羊水の前処理用試薬、ELISA用試薬、培養細胞に添加する炎症性サイトカインの価格が当初の想定より高価となっているため、生じた次年度使用額の一部はこれに充てることを計画している。また、データ解析では、研究補助者による補助の必要性が増大することが予測され、次年度使用額の一部は、研究補助者への人件費・謝金にも充てることを計画している。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Secretion of free activin A from human amniotic epithelial cells2016
Author(s)
Okabayashi T, Arai N, Hasuko S, Higeta D, Kameda T, Minegishi T, Sadakata H, Hasegawa Y, Abe Y
Organizer
International Symposium on Pituitary Gland and Related Systems 2016
Place of Presentation
East-West Center, University of Hawaii at Manoa (Honolulu, Hawaii)
Year and Date
2016-09-02 – 2016-09-04
Int'l Joint Research
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