2015 Fiscal Year Research-status Report
胎児肺成熟新規診断マーカーとしての母体血中Neuregulin-1の有用性の研究
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15K10665
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大平 哲史 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (90397315)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩沢 丹里 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20235493)
樋口 正太郎 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (50750098)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Neuregulin-1 / 胎児肺成熟 / 胎盤絨毛内血管内皮細胞 / 母体血 / 妊娠高血圧症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
Neuregulin-1(NRG-1)はⅡ型肺胞上皮細胞のerbB受容体を介してサーファクタント産生を促すことで胎児肺成熟に関与していることが報告されているが、我々はこれまでに胎盤絨毛内の血管内皮細胞でNRG-1β1が産生されていることを見出した。そこで妊娠22週~34週で分娩となった母体妊娠高血圧症候群(PIH)症例の胎盤と、同時期の非PIH症例の胎盤において、幹絨毛内に認められる径100μm以上の血管内皮におけるNRG-1β1の蛋白発現を免疫組織学化学的に比較・検討した。染色強度により染色スコアを設定して比較したところ、幹絨毛血管内皮のNRG-1β1染色スコアはPIH群が非PIH群よりも有意に高く、PIH症例でNRG-1β1発現が増強していた。またヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)をそれぞれ21%酸素、5%酸素、2%酸素環境下で72時間培養し、HUVECの蛋白を抽出してWestern blottingでNRG-1β1発現を比較した。HUVECにおけるNRG-1β1蛋白発現は、21%酸素下よりも5%酸素下、さらには2%酸素下で増強していた。また血漿におけるNRG-1β1の定量をELISA法で確立し、分娩時臍帯静脈血中NRG-1β1を定量して母体PIH群と非PIH群で比較した。NRG-1β1濃度の中央値は母体PIH群が非PIH群よりも有意に高く、母体PIH症例でNRG-1β1濃度が増加していた。さらに母体血中NRG-1β1濃度をPIH群と非PIH群で比較したところ、中央値はPIH群の方が有意に高値であった。以上から、母体PIHでは非PIHよりも母体血および臍帯血でNRG-1β1濃度は高値であり、胎児肺成熟の新規診断マーカーとして血中NRG-1β1濃度が利用できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにPIHに代表される低酸素環境の臍帯-胎盤系におけるNRG-1β1の強発現は十分に検討され、母体血と臍帯血における母体PIH群でのNRG-1β1濃度高値も示された。ただし、母体血中のNRG-1β1濃度の検討については、検体数を増やして今後もさらに進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には計画書に沿って研究を進めていく。マウス胎仔Ⅱ型肺胞上皮の細胞培養株を樹立し、recombinant Neuregulin-1を添加することでNeuregulin-1の肺成熟作用を解析する。またヒト胎盤におけるErbB2、ErbB3、ErbB4の発現を免疫組織学的に検討していく。研究は教室および大学の設備を利用して行う。
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