2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K10678
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
大場 隆 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (50244132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
副島 英伸 佐賀大学, 医学部, 教授 (30304885)
片渕 秀隆 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90224451)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 胎盤 / 間葉性異形成胎盤 / インプリンティング / 出生前診断 / 胞状奇胎 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに49例の本邦におけるPMD症例を集積した。臨床情報にくわえて胎盤の病理組織学的検討、ならびにエピゲノム変異についての検討を加えた研究としては国内外含めて過去最大の症例数である。本邦においても、PMDはBeckwith-Wiedemann症候群(BWS)や、児が女児であることと強く相関し、また早産や胎児発育不全、胎児死亡、新生児合併症の発症率が高かった。胎児死亡はBWSを合併しない症例のみに認められ、その多くが胎児発育不全を伴っていた。国内における胎児死亡率は17.0%と欧米における先行研究の35.6%に比して低く、本邦におけるハイリスク胎児に対する妊娠管理体制が、PMDの胎児に対しても有効であったことが示唆された。 超音波断層法所見が得られた34例のうち、 妊娠初期に胞状奇胎との鑑別を要する嚢胞状の胎盤が認められたのは27例 (79.4%) で、妊娠経過とともに嚢胞が出現する、あるいは嚢胞が目立たなくなる症例もみられた。妊娠中期の母体血中hCG正常・AFP高値であることは、PMDを示唆する所見と考えられた。また相対的巨大胎盤であることはBWSやFGRの有無に関わらずPMDを強く示唆する所見であった。いっぽう胎盤におけるPMDの病変は肉眼的にも組織学的にも均質でなく、採取部位によっては一見して正常所見であった。限られた標本の病理組織学的検討のみからPMDの有無を診断することは推奨されないと結論づけることができた。またPMDの本態は胚におけるエピゲノム変異、特にインプリンティング関連領域のメチル化異常であるという結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は平成28年度熊本地震による研究の中断から十分に恢復出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに蓄積したデータをもとに論文執筆中である。今年5月の日本産科婦人科学会、9月のInternational Federation of Placenta Associationsにおいて成果を発表する予定である。 1.診断・管理支援と臨床・病理像の解明:妊娠中にPMDを疑われた国内症例について診断支援を継続する。 2.エピゲノム変異の機能解明と臨床実装への基盤形成:PMDの本態は胚におけるエピゲノム変異、特にインプリンティング関連領域のメチル化異常であるという結果を得ている。胎盤におけるPMD病変部と正常部、ならびに臍帯血のゲノムDNAを用いて、ゲノム中に散在するゲノムインプリンティング関連メチル化領域30 カ所およびゲノム全体のメチル化を網羅的かつ定量的に解析し、PMD発症に関わるメチル化異常を同定する。新鮮な状態で提供された胎盤についてはRNAを抽出して遺伝子発現を解析する。またインプリント遺伝子をトランスジーンとしたトランスジェニックマウス(Tgマウス)を作成する。作成したTgマウスの妊娠経過、胎盤、胎仔を解析し、ヒトのデータと比較する。ヒト検体の解析とモデルマウスの解析で得られたデータから実臨床へフィードバックできる知見を得る。
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Causes of Carryover |
熊本地震の影響で研究が中断し、昨年度中に論文投稿ならびに報告書作成を完結することができなかった。上記にかかる経費を次年度に残した。
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