2015 Fiscal Year Research-status Report
新生児ヘモクロマトーシスの胎児肝細胞抗原蛋白の特定と母体IgG抗体測定方法の開発
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15K10696
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
佐々木 愛子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, その他 (60560711)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 新生児ヘモクロマトーシス / エクソーム解析 / 病態解析 / 全国調査 / 全国患者検体収集 |
Outline of Annual Research Achievements |
新生児ヘモクロマトーシス(以下NH)は胎児期・新生児期から重篤な肝障害を来す極めて稀な難病であり、疾患の機序として母体から移行する抗胎児肝細胞蛋白IgG抗体が胎児肝細胞を傷害すると言われている。初年度の平成27年度は、疾患母体血清を一次抗体とし、マウス組織・cell lineに発現する蛋白を標的としたwestern blotting、免疫染色を実施した。しかし、同定には至らず、上記方法で原因蛋白を同定することは困難と判断した。 遺伝子解析からのアプローチとしてのExome解析、またその後の確認のための母体血清収集のためには複数家系の把握が必要である。しかしNHは稀少疾患で、発症頻度含め本邦における実態が不明であるため、年間発症数・発症率を推定するための全国調査(新生児ヘモクロマトーシスに対する実態調査)を自施設の倫理委員会の承認を得て行った。 一次調査は、全国の総合周産期母子医療センター(産婦人科、新生児科)、臓器移植センターに対して全数調査を行った。それにより、平成22年から26年の5年間における該当症例数と、該当症例がある場合の二次調査への参加の可否につき回答を得た。回収率は71.2%(275施設中196施設)であった。一次調査で二次調査に参加可能と返信のあった施設を対象に、各症例の臨床情報を収集し、同時に本研究への患者検体提供が可能かを調査した。調査期間外の症例を含め35例の本邦のNH症例の集積が可能であった。 また、文献調査として、最近20年における国内のNHに対する論文・症例報告を収集し、86報告を確認した。以上のことから、NHは本邦において年間100万出生中、4~5例発症していることが推測された。今後、このデータを患者検体を本研究や、海外で行われている胎内治療の実施へ向けての基礎資料とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Western blotting、免疫染色による同定を行ったが原因蛋白の同定につながらなかったため、in vitroの研究で方針の転換が必要となった。先行させることとしたExome解析に関しては、独立2家系においてゲノムDNAを収集し、ライブラリー調整とシーケンシングを行った。さらに、今後の解析のための更なる検体収集につながる全国調査を実施し、希少症例における複数独立家系の収集の足がかりとした。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、シーケンシングまで実施した3家系におけるデータの解析、候補遺伝子の検索を行う。絞り込みの結果を踏まえ、iPS細胞あるいは蛋白の過剰発現系を用いた実験で、原因蛋白の同定を実施する。
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Causes of Carryover |
in vitro解析による同定が困難と判断したため、Exome解析の結果を待つこととした。Exome解析は自施設で実施しているが、他研究との兼ね合いもありシーケンシングを終了するのに時間がかかったため、具体的に解析に移るのは平成28年度以降となった。そのためiPS細胞作成を含めたin vitro解析で使用する予定であった金額を次年度以降に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
複数家系のシーケンシングが終了したため、Exome解析を行い原因蛋白の絞り込みを行う。そこで得た結果を元に、平成27年度にin vitro解析で使用予定であった金額を用いて原因蛋白の同定を行う予定である。
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