2017 Fiscal Year Research-status Report
次世代シークエンサーによるHPV準種解析:子宮頸部発癌との関連について
Project/Area Number |
15K10701
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
小貫 麻美子 昭和大学, 医学部, 講師 (20573744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柊元 巌 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 室長 (70291127)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヒトパピローマウイルス / 全ゲノム増幅 / 準種解析 / 子宮頸癌 / 子宮頸部上皮内病変 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸癌及びその前癌病変(CIN) の原因である。HPVは遺伝子配列の異なるバリアントや準種と呼ばれる突然変異株を多数生じることが知られている。本研究はわが国の子宮頸癌・CIN患者で高頻度に検出されるHPV16,18,31,52,58型を対象に 各型のウイルス準種が子宮頸部発癌にどのように関与しているかを明確にすることを目的としている。2018年3月末の時点で計202検体を収集し以下の通り検討した。 (1) HPV52/58の全ゲノム配列解析 日本人女性の子宮頸癌及びCIN病変に検出されるHPV52/58の全ゲノム配列を決定し、その配列多様性を解析した。臨床検体から抽出したDNAからPCRにてHPV52/58の全ゲノム領域を増幅し、Nextera XT kitを用いてライブラリー化して、次世代シークエンサーによる配列解読を行った。その結果、HPV52/58のバリアント分布は、HPV52でlineage B (50/52検体)、HPV58でlineage A (47/48検体)に著しく偏っていた。またHPV52/58間で異なるウイルス遺伝子産物内にアミノ酸残基の多様性が観察された。 (2) 次世代シークエンサーを用いたHPVゲノムの多様性解析 患者体内でのHPVゲノム配列の多様性を次世代シークエンサーで解析することを目的に臨床検体からDNA抽出、HPVジェノタイピングの後、HPV16/52/58陽性の検体からlong PCRにて全長HPVゲノムを増幅した。得られたPCR産物をNextera XT kitを用いてライブラリー化し、次世代シークエンサーによる配列解析を行った。その結果、0.5%以上の頻度で多様性を示すゲノム配列部位が多数見出された。その大部分がC to TまたはG to A置換変異であったことからAPOBEC3蛋白質の関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に述べたとおり検体数は200を超えており、現在も集積中である。現時点での知見も上記の通り得られており既に論文が2編アクセプトされている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上記知見を国際パピローマウイルス学会や日本癌学会などで広く発表を行う予定である。 また、次世代シークエンサーを用いた子宮頸癌及びCIN患者でのHPV組み込み部位の解析を行いたいと考えている。既に平成29年度の時点でその準備段階として、ハイブリダイゼーションにてHPVと細胞DNAの融合DNAをキャプチャーするため、29種類の遺伝子型のHPV配列を含むビオチン化HPV DNAライブラリーのデザイン・合成を行った。さらに培養細胞及び子宮頸癌の臨床検体を用いて、キャプチャーと配列解読の予備検討を実施している。さらに臨床情報と照合し,子宮頸癌患者でのHPV配列・多様性と治療効果・予後との関連について検討して行きたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究は前述の通り、おおむね順調に進行している。物品費で計上予定だったパソコンや記憶媒体の購入を行わずに研究が進められていたため、特に物品費の購入が予定より少なくなっていると考えられる。その一方で、英文校正や論文投稿費用など”その他”に分類される費用が増加傾向にある。今後さらに1年間当該研究の延長が認められたため、臨床検体収集のための消耗品や研究試薬などの追加購入が必要である。また、平成30年度には研究成果を国際学会(国際パピローマウイルス学会、2018年10月)で発表予定であるため、その費用に充てる。
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Research Products
(5 results)