2016 Fiscal Year Research-status Report
進行性・転移性卵巣癌におけるPar3複合体の機能解析とEMT阻害剤開発への応用
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15K10705
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長阪 一憲 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30624233)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 腹膜播種 / IL6/STAT3経路 / 細胞極性 / Par3蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮細胞における細胞極性制御は、ScribbleおよびPar複合体といった分子群が主たる役割を持つことが知られている。Par3蛋白質は上皮細胞ではtight junctionに局在しており、細胞極性を制御する蛋白質と知られている。国内外の複数の研究グループが、これまでに行った上皮細胞を用いた解析から、Par3蛋白質がaPKC蛋白質、Par6蛋白質と複合体を形成し、上皮細胞の接着装置に共局在することで細胞極性の形成と維持をすることが知られている。しかし、癌の悪性化の分子機構との関連についてはまだ不明な点が多い。中でもPar3蛋白質は上皮細胞で異常発現すると、細胞の上皮間葉移行や浸潤能に関わるとされている。そこで、本研究はこれまでの研究成果に基づき、進行性・転移性卵巣癌におけるPar3蛋白質の機能を解明する目的で行った。研究倫理委員会の承認を得て同意が得られた卵巣癌患者50名の生存期間と手術にて摘出された卵巣癌組織におけるPar3蛋白質発現の関連について比較検討を行った。次に、卵巣癌細胞株を使用して細胞内で発現するPar3蛋白質の機能を解明するために、RNAi法にて細胞内のPar3蛋白質ノックダウンさせ、IL-6/STAT3経路への影響を調べた。臨床検体を用いた検討では、卵巣癌組織中のPar3蛋白質発現が低いと、予後が良好であることが判明した。また、臨床病理学的因子に対する単変量解析では、Par3蛋白質の高発現と腹膜播種には高い相関が認められた。一方、卵巣癌細胞株を用いた検討では、Par3蛋白質が細胞内でノックダウンされると、浸潤能、増殖能が負に制御されることがわかった。卵巣癌において、Par3蛋白質の発現は腹膜播種と関連があり、IL6/STAT3経路を制御していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵巣癌では、腹腔内播種、転移が重要な予後規定因子であり、これらの病態とEMTが密接に関係している。本年度の研究成果によって、卵巣癌に対する新規EMT阻害剤の開発を目指した基礎的研究が行えたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
卵巣癌に対する新規EMT阻害剤の開発を目指した基礎的研究を行う。また、進行卵巣癌の悪性度を規定する経路として血管新生制御があるが、血管新生因子を標的にして癌の増殖を抑える血管新生阻害剤を用いた研究、また、p53蛋白質に関わるシグナル伝達経路を制御する阻害剤(MDM2阻害剤)などを用いた新規卵巣癌治療薬の開発を目指した研究を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は論文作成、学会発表に費やした研究活動が多く、研究試薬などにかかる費用が減額されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度では新しい実験計画を予定している。臨床応用を目指した解析を進めていることから、次年度では支出が多くなると見込まれる。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Expression of Par3 polarity protein correlates with poor prognosis in ovarian cancer2016
Author(s)
Hiroe Nakamura1, Kazunori Nagasaka1, §, Kei Kawana1, §, Ayumi Taguchi1, Yoshiko Kawata, Yuriko Uehara1, Mitsuyo Yoshida1, Masakazu Sato1, Haruka Nishida1, Asaha Fujimoto1, Tomoko Inoue1, Katsuyuki Adachi1, Takeshi Nagamatsu1, Takahide Arimoto1, Katsutoshi Oda1, Yutaka Osuga1, Tomoyuki Fujii1
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Journal Title
BMC Cancer
Volume: 16
Pages: 897
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant