2017 Fiscal Year Research-status Report
更年期うつ症状の発症機構における酸化ストレスの関与に関する基礎的研究
Project/Area Number |
15K10706
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
寺内 公一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (90361708)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保田 俊郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50126223) [Withdrawn]
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 更年期障害 / うつ状態 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
更年期女性における精神症状の頻度は高く、かつQOLを著明に低下させるが、その発症機構は未だに明らかではない。われわれは、更年期うつ症状発症機構への酸化ストレスの関与について明らかにするための卵巣摘出動物モデル実験において、適度な外的ストレスが視床下部─下垂体─副腎皮質 (HPA) 軸を介して体内の酸化ストレスを抑制することを示すレジリエンス曲線が、エストロジェン欠乏によって変化する可能性を見出した。この現象は、更年期女性において外的ストレスに対するレジリエンスが低下し精神症状を発症し易くなる機構を説明できる可能性がある。 本動物実験によって得られた当初の予想に反する結果からは、「強制水泳試験のような外的ストレスを加えた場合に発生する体内酸化ストレスの程度が偽手術マウスと卵巣摘出マウスでは異なる」ことを示している。一般に、いわゆる「外的ストレス」と「体内酸化ストレス」との関係に対しては視床下部─下垂体─副腎皮質系が関与することが知られている。すなわち、適度な外的ストレスはコルチゾールを介してむしろ体内酸化ストレスを軽減させるが、過剰な外的ストレスはかえって酸化ストレスを増幅させる (Aschbacher 2013 Pshychoneuroendocrinology)。外的ストレスが加わった場合に精神症状を発症しやすいか (脆弱性 vulnerability) 発症しにくいか (レジリエンス resilience) は心理社会的要因に左右されるが、上述の実験結果はエストロジェンの低下がこの作用曲線 (レジリエンス曲線)を変化させ得る可能性を示唆している。この現象をより詳細に検討する ことにより、同程度の外的ストレスを受けた場合に更年期女性がより精神症状を発症しやすい機序を明らかにできる可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年度に実施を計画していた基礎的な動物実験、すなわち閉経の動物モデルである卵巣摘出マウスと偽手術マウスについて強制水泳試験によるうつ病様行動を比較する動物行動解析試験に関して、本学動物実験センターのP2区画で実験を行うための調整に膨大な時間を要し、平成28年8月にようやく実験を開始することが可能になった。そのため全体の実験計画に遅延を生じ、研究の当初目標を達成できていないため。
|
Strategy for Future Research Activity |
更年期女性の動物モデルとしての卵巣摘出マウスに強制水泳試験によって代表される外的ストレスを様々な程度で加えた場合に見られるHPA軸と酸化ストレス関連パラメータの変動が、卵巣摘出の有無によって変化するか否かの検討を行う。 これまでの研究で確立した卵巣摘出ICRマウスに対する強制水泳試験モデルを用いる。前研究では「うつ病様行動」を評価する目的で手術後1回のみ行った強制水泳試験を、外的ストレスのモデルとして時間・頻度などを様々に変化させて卵巣摘出マウスおよび偽手術マウスに施す。手術2週間後に心嚢穿刺により採取した血液を用い、前研究で測定した体内酸化ストレス関連パラメータであるdROM, BAP, nitrotyrosine, thiol, MDAなどに加え、視床下部─下垂体―副腎皮質 (HPA) 軸の指標であるCRH, ACTH, コルチゾール等を測定する。外的ストレスの程度によってHPA軸の影響のもとに体内酸化ストレスが変動することを示すレジリエンス曲線が卵巣摘出マウスと偽手術マウスによって異なるかどうかを検討する。
|
Causes of Carryover |
平成27年度に実施を計画していた基礎的な動物実験、すなわち閉経の動物モデルである卵巣摘出マウスと偽手術マウスについて強制水泳試験によるうつ病様行動を比較する動物行動解析試験に関して、本学動物実験センターのP2区画で実験を行うための調整に膨大な時間を要し、平成28年8月にようやく実験を開始することが可能になった。そのため全体の実験計画に遅延を生じ、研究の当初目標を達成できていないため。
|