2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K10715
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上田 豊 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10346215)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 潔 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90362730)
小林 栄仁 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50614773)
松崎 慎哉 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (00467565)
高田 友美 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30437420) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 婦人科腫瘍 / 子宮頚部神経内分泌腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、平成27年度に一部残っていたアンドロゲン受容体遺伝子の不活化のパターンを利用したクロナリティー解析を完遂した。すなわち、神経内分泌腫瘍領域と腺癌領域の混在する腫瘍4症例において、それぞれの領域のクロナリティーを解析したところ、いずれも神経内分泌腫瘍領域と腺癌領域が同一のクロナリティーとして矛盾しないという結果であった。したがって、神経内分泌腫瘍領域と腺癌領域が単一の細胞から発生し、別の組織型に分化したと解釈できる。 次に、平成27年度に着手していたCTOS(cancer tissue originated spheroid)樹立とそれを活用した研究を実施した。すなわち、神経内分泌領域と腺癌領域の分化に関わる遺伝子(遺伝子X)を同定し、その遺伝子Xを制御する遺伝子(遺伝子Y)を同定した。すでに、CTOSを利用して、遺伝子Xの導入による神経内分泌腫瘍細胞から腺癌細胞への組織誘導も確認できている。現在は、腺癌細胞から神経内分泌腫瘍細胞への分化誘導を試みている。 この遺伝子Yは放射線感受性・化学療法感受性に関わる遺伝子として知られており、神経内分泌腫瘍における放射線抵抗性・化学療法抵抗性にも関与している可能性が示唆された。これについては平成29年度に解析を行いたいと考えている。 上記の遺伝子Xや遺伝子Yは融合遺伝子ではなく、神経内分泌腫瘍における遺伝子融合の解析は実施できていないが、神経内分泌腫瘍の発生や分化に関わる遺伝子は同定できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、平成27年度に一部残っていたアンドロゲン受容体遺伝子の不活化のパターンを利用したクロナリティー解析を完遂した。これは本来は平成27年度に終了している予定であったが、一部完了できていなかったため、平成28年度に速やかに実施完了した。 次に、平成27年度・28年度には神経内分泌腫瘍の発生や分化に関わる融合遺伝子の解析を行う予定であったが、平成27年度に着手したCTOS(cancer tissue originated spheroid)樹立とそれを活用した研究が一定の成果を得ていたため、それを継続・展開した。すなわち、融合遺伝子ではないが、神経内分泌腫瘍および腺癌の分化の鍵を握る遺伝子(遺伝子X)を同定でき、かつ、それを制御している遺伝子(遺伝子Y)も明らかにすることができた。これは当初想定していた以上の成果である。融合遺伝子の検索も、もともとは神経内分泌腫瘍の発生・分化に関わる遺伝子を明らかにすることが目標であったため、その解析ではなく、今回同定できた遺伝子X・遺伝子Yの解析を進めることとした。 現在は、腺癌細胞と神経内分泌腫瘍細胞それぞれへの分化誘導を試みている。 また、この遺伝子Yは放射線感受性・化学療法感受性に関わる遺伝子として知られており、神経内分泌腫瘍における放射線抵抗性・化学療法抵抗性にも関与している可能性が示唆された。この解析は平成29年度に予定していたものであり、順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、CTOSを活用して、遺伝子Xおよび遺伝子Yの神経内分泌腫瘍の発生や分化における役割の解析を深める。すなわち、腺癌細胞と神経内分泌腫瘍細胞それぞれへの分化誘導を随意に行える遺伝子環境を明らかにする。これは将来の神経内分泌腫瘍・腺癌腫瘍の治療において、組織分化を図って治療を行うという可能性につながるものである。 上記を解析するにあたり、遺伝子Xや遺伝子Yの放射線感受性・化学療法感受性に関する役割の解析も重要である。これらは当初から平成29年度に実施予定であった解析(融合遺伝子を想定したものではあったが)であり、遺伝子Xと遺伝子Yにフォーカスを当てて、予定通りこれを行う。 また臨床検体や臨床情報を活用して、遺伝子Xや遺伝子Yの発現と組織型の分布(腺癌成分と神経内分泌腫瘍成分の比率)と放射線感受性・化学療法感受性や予後等の検討も実施したい。これら解析結果を総合して、神経内分泌腫瘍の新しい治療戦略をなりうる治療方法の開発につなげたい。 昨年度・今年度の解析において融合遺伝子の解析は進められておらず、当初の研究計画とは若干変わっているところもあるが、予想以上に進展した神経内分泌腫瘍細胞と腺癌細胞の分化に関わる遺伝子等の解析を重点的に進めていく予定である。これらの解析により、現状では極めて予後の不良である神経内分泌腫瘍の新規治療法の開発や予後の改善に寄与できるようなものとしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成28年度は当初予定では、RNA sequence法を活用した融合遺伝子検索を行うことになっていたが、進捗に記載したごとく、融合遺伝子ではないが、神経内分泌腫瘍発生および腺癌との分化に関わる遺伝子が同定できたために、その遺伝子の解析の研究を推し進めた。この遺伝子の解析用に各種試薬等が必要であったが、融合遺伝子検索に計上していたRNA sequence法に関する経費が未使用となった。さらに、前年度からの継続でクロナリティー解析を行ったために、これは当初予定に加えての支出となった。これら早計として、記載の残額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き実験に必要な物品の購入を行う。
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