2016 Fiscal Year Research-status Report
子宮頸癌で低下する新規癌抑制分子Crystallinに対する分子標的治療の開発
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15K10719
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
末岡 幸太郎 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (40452643)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クリスタリン |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに子宮頸部扁平上皮癌組織において、癌で発現が減弱する蛋白としてCrystallin (CRYAB) を同定し、プレリミナリーな研究からこれが癌抑制分子である可能性を考えている。 そこでまず子宮頸部扁平上皮細胞癌細胞株SKG-IIを用いて、CRYAB高発現細胞株を作成し、 in vitroにおける機能解析を行った。機能解析として1.細胞増殖能、2.細胞遊走能、3.マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)分泌能、4.細胞浸潤能、5.スフェロイド形成能の評価を行った。その結果は1、2、3、4のいずれにおいても、CRYABの高発現状態は、有意な関連を見出せなかった。5に関しては、CRYABの発現は有意にスフェロイド形成能が低下させていた。以上を昨年報告した。 その後のさらにin vitroの機能解析を進め、6.抗癌剤シスプラチン感受性に関する検討として、培養液中にシスプラチンを添加し、24時間、72時間、120時間後の生存細胞数をMTTアッセイにより検討した。その結果はCRYAB高発現細胞ではコントロールと比して有意な差を認めなかった。 そこで新たに細胞株への遺伝子導入、安定細胞株の樹立から行い、再度in vitroの機能解析を行ってみたが、結果は初回の研究の結果と同様に、1.細胞増殖能、2.細胞遊走能、3.proMMP-2、MMP-2の発現量、4.浸潤能において、いずれもネガティブな結果であった。 また、プレリミナリーな検討として、摘出子宮の病理組織検体を用いて、CRYABによる免疫組織染色を行った。前癌状態であるCIN1、CIN2、CIN3、浸潤癌である子宮頸癌1B1期のそれぞれ3例ずつを対象に行ったが、CINでは陽性となったが、浸潤癌では陰性となり、これは予想と合致したものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
臨床検体を用いた免疫組織染色の検討では、やはり子宮頚癌で発現が減弱していることは確認できた。しかしその作用機序としてin vitro の検討では増殖、遊走、浸潤などの因子の関与は見られず、細胞株を新たに作成し直した検討でも同様の結果で、当初の予想とは反する結果となった。唯一スフェロイド形成能はCRYAB高発現細胞株で低下しており、予想と合致した結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で組織検体を用いた免疫染色の検討では、発現減弱という予想通りの結果が得られ、CRYABの機能が注目される所である。その機能としては当初予想して因子とは異なっているが、スフェロイド形成能への関与が示唆され、スフェロイド形成能は癌幹細胞で形成能が増強することが知られていることから、CRYABが癌幹細胞の性質に関わっていること、また発現増強によりスフェロイド形成能が低下することは、癌抑制分子としての機能を有することが考えられる。従って今後は癌幹細胞の性質に関する検討として、癌幹細胞マーカーを用いた免疫組織染色や、in vitroにおけるウェスタンブロット、フローサイトメトリーを利用した機能解析を行いたい。また子宮頸癌でよく知られるパピローマE6蛋白とユビキチンとの関連が知られており、近年CRYABとユビキチンープロテアソーム系の関連が報告されている。CRYAB分子とこの系との関連を今後検討して行きたい。
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Causes of Carryover |
これまでの成果は予備実験を施行した際に用いていた試薬等の、残っていたものを使用した。また追加で抗体や免疫組織染色用のスライド作成費、その他消耗品費用などが必要であった。今後は実験の成果が予想と反したものになったため、再度実験を構築し直すため、新規の試薬購入等が必要になると思われる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新規の実験の立ち上げが必要となるため、癌幹細胞用の抗体、癌幹細胞分離用の試薬など、新たな研究に必要な試薬を購入予定である。
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[Journal Article] G-CSF産生子宮頸癌の1例2016
Author(s)
西本 裕喜, 末岡 幸太郎, 中島 健吾, 梶邑 匠彌, 岡田 真紀, 澁谷 文恵, 田村 功, 竹谷 俊明, 杉野 法広
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Journal Title
現代産婦人科
Volume: 64
Pages: 409-413
Peer Reviewed / Open Access
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