2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K10724
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
佐藤 美紀子 横浜市立大学, 附属病院, 准教授 (70326049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮城 洋平 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), がん分子病態研究部門, 総括部長 (00254194)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 子宮筋腫 / エリスロポエチン |
Outline of Annual Research Achievements |
<背景と目的> 我々はこれまでに一部の子宮平滑筋腫(筋腫)でErythropoietin (EPO)が高発現していること,EPO高発現の筋腫は低発現の筋腫に対して腫瘍径が大きく,腫瘍内血管成熟が亢進していることから,EPOが腫瘍内血管の成熟を促し血流量を保持することで腫瘍増大に寄与している可能性を報告した(Asano R, Asai-Sato M. et al, Am J Obstet Gynecol. 2015;213(2)199.e1-8.).本研究は子宮筋腫がEPOを発現する機序と,その作用について検証することを目的としている. <平成27年度研究実績の概要> 当院で摘出された子宮筋腫108例で,70%の子宮筋腫の発生に関わることが報告されている遺伝子(Mediator Complex Subunit 12:MED12)遺伝子点変異を検証した.その結果,MED12野生型に比較してEPOの発現量が有意に低く,EPO発現量上位20例の筋腫ではMED12変異型がわずか15%だったのに対し,EPO発現下位20例の筋腫はMED12変異型が85%存在していた.MED12点変異以外の遺伝子異常すなわちHMGA1&2 mRNAの発現とFHのLOHについて検証したが,EPO発現量との差は認められなかった.したがって,子宮筋腫における様々な分子遺伝学的サブタイプのうち,最も多く認められるMED12点変異でないタイプにおいて,EPOの高発現が誘導されているものと考えられたが,EPO発現が亢進する分子遺伝学的サブタイプは未だ解析中で,同定されていない. また,子宮筋腫組織初代培養系を用いて,EPO発現に対する卵巣ホルモンや低酸素の影響を検証したところ,MED12野生型の筋腫についてエストロゲンがEPO発現を誘導し,低酸素は影響を及ぼさないことを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EPOを高発現する筋腫はほぼ全例MED12野生型のものであったことから,分子遺伝学的に特異的な筋腫においてEPOが発現し腫瘍増大に関与している可能性を示唆する結果を得,今後の研究への大きな足がかりとなった.また,筋腫におけるEPOの作用や発現機序を検証するにあたっては従来我々が行ってきた筋腫の全組織や初代培養系を用いた実験系では限界があり,不死化細胞などを用いたin vitroの実験系の確立が必要であり,平成28年度以降の課題と考えている.本課題のもう一つの課題であるEPOの発現と臨床データ(年齢,妊娠・出産の有無やホルモン周期との関連,画像診断との関連,腫瘍増大などの臨床経過)との関連については,症例データの不足などから新規症例登録が必要であったため今年度は進捗が見られなかった
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Strategy for Future Research Activity |
EPO高発現の筋腫はMED12野生型であることは確認できたが,その中で具体的にどのような遺伝子異常が発生しているかの同定については,全ゲノム解析やそれに準じた手法が必要と考えている.しかし研究経費の問題があり代替えの実験法も含め検討中である. さらに,現在MED12野生型および変異型,EPO高発現型および低発現型の筋腫組織についてレンチウィルスを用いた不死化細胞株を作成中である.不死化細胞株が確立し次第,筋腫細胞におけるEPO発現機序(卵巣ホルモンや成長因子,低酸素による影響),EPOの筋腫細胞に対する作用(細胞増殖や抗アポトーシス作用,および血管新生と血管成熟に対する影響)の検証を行う予定である.不死化細胞株が樹立するまでの期間には,平成27年度に引き続き筋腫組織の初期培養系を用いた上記に関する実験を行う.また,EPOの発現と臨床データとの関連性の検討に関しても,来年度以降はデータの整った症例が蓄積しはじめているため解析開始できるものと考える.
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