2017 Fiscal Year Research-status Report
子宮体癌におけるセンチネルリンパ節生検を併用したリンパ節郭清個別化に関する研究
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15K10739
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Research Institution | Hokkaido Cancer Center(Department of Clinical Research) |
Principal Investigator |
藤堂 幸治 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), 臨床研究部, 婦人科医長 (90374389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 秀則 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), 臨床研究部, 院長 (60214392)
櫻木 範明 北海道大学, 医学研究院, 特任教授 (70153963) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子宮体癌 / センチネルリンパ節 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の成果は2点である。一点は当院における子宮体癌のセンチネルリンパ節(SLN)の同定率と転移診断能に関するデータが海外雑誌(Taiwanese Journal of Obstetrics and Gynecology)に掲載受理されることが決定したこと。もう一点は平成29年1月の臨床研究がスタート後、現在までに29例の症例エントリーが行われたことである。投稿論文は当院におけるセンチネルリンパ節(SLN)生検の診断能に関するプレリミナリーな内容で、SLN同定率(少なくとも一側のSLNが同定された症例の割合)が94%、真のリンパ節転移を診断する感度が100%、陰性反応的中度が100%であったことを報告した。一方、臨床研究の進捗状況であるが、研究開始後に当院で初回治療を行った子宮体癌(100例)において29例の症例登録があった。年齢中央値56歳 (41-83歳)、リンパ節転移スコア 0点(最低リスク) 20例、同 1点(低リスク) 9例、内視鏡下手術26例、開腹手術3例であった。全ての登録症例に対してSLN生検が行われた。SLN同定率は現在のところ100%で、全例に術中迅速診断が実施された。術中迅速診断の結果は26例で陰性、3例で陽性であった。陰性例については系統的リンパ節郭清の実施は行われなかった。陽性の3例はいずれも術前のリンパ節転移スコアは 1点(低リスク)で、系統的リンパ節郭清が実施された。うち1例は骨盤のみならず傍大動脈リンパ節にも腫瘍病変を認めた。プライマリーエンドポイントの一つである下肢リンパ浮腫は、系統的リンパ節郭清を実施した3例を含めても、その発生は確認されていない。骨盤リンパ嚢胞や下肢静脈血栓症、イレウスなど、それ以外の周術期合併症が問題となったケースもなく、順調に研究は進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
問題点はリクルート率の低さである。本研究はリンパ節転移の危険率(事前予測値)3%の最低リスク群とリンパ節転移危険率10%の低リスク群をリクルート対象とし、リンパ節転移危険率20%以上の中リスク、高リスク群はリクルートの対象とはしていない。最低リスク群と低リスク群を併せると全子宮体癌の78%を占めると計算していたため、本研究におけるリクルート率の目標は、当院で初回治療を受けた全子宮体癌症例のうち約6割としていた。しかしこれまでの現状は100例中29例(29%)と予想の半数である。リクルート失敗の原因は主に2つある。第一は患者の拒否である。とくにリンパ節転移危険率10%の低リスク群に該当する患者は、リンパ節郭清を省略することによる再発/死亡率の増加を懸念して臨床研究への参加を躊躇する。第二は担当医の問題である。リンパ節転移危険率10%の低リスク群にあたる患者には臨床研究があることすら紹介していないケースがあることが判明した。該当する医師には臨床研究の必要性について勉強会を開催するなどして、再三説明を行い、研究への参加を促している。しかしながらこのタイプの医師は患者への説明の段階で「リンパ節郭清を行ったほうが良い」とは言わないまでも「リンパ節郭清を行ったほうが良さそう」と思わせるようなニュアンスを含めてしまうため、結果的に患者による拒否という形でリクルートに失敗しているようである。また医師の臨床研究への参加に関するモチベーションには個人差がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は臨床研究への患者のリクルート数を増やすことに注力する。まず在籍中の医師の熱意を維持させるための再教育を行う。新加入の医師に対する当該臨床研究の周知および教育を行う。他施設との協力について具体的に着手する。セミナーの開催、倫理委員会資料作成の支援、患者紹介システムの構築を行う。
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Causes of Carryover |
臨床試験遂行に必要な物品費、人件費がおおむね当初の予定通り使用できた。
今後は臨床研究への患者のリクルート数を増やすことに注力する。セミナーの開催、患者紹介システムの構築に関する資料作成、人件費に充てるための費用が必要となるため、次年度使用額を含めた財源で賄っていく予定である。
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