2018 Fiscal Year Research-status Report
子宮体癌におけるセンチネルリンパ節生検を併用したリンパ節郭清個別化に関する研究
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15K10739
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Research Institution | Hokkaido Cancer Center(Department of Clinical Research) |
Principal Investigator |
藤堂 幸治 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), 臨床研究部, 婦人科医長 (90374389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 秀則 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), 臨床研究部, 院長 (60214392)
櫻木 範明 北海道大学, 医学研究院, 名誉教授 (70153963) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 子宮体癌 / センチネルリンパ節 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は研究の大きな進展を認める一年となった。平成29年1月に前方視的臨床研究としてスタートして以来、1年目は患者のリクルートに苦労したため、在籍中の医師および新加入の医師に向けた当該臨床研究の周知および教育、学会への参加を推進した。その結果、患者のリクルートに大きな改善が認められた。臨床試験開始後の初年度はリクルート率が40%台前半であったものが、本年度第一四半期で80%台後半と目標値に達している。ただし初年度のリクルート率が予想以上に低かったため、研究期間を1年程度延長する必要があると考えている。 本研究はリンパ節転移スコアの最低リスク群および低リスク群にセンチネルリンパ節の術中診断を行い転移陰性の場合に系統的リンパ節郭清を省略するスタディであるが、primary endpointは合併症発生率、Secondary endpointはセンチネルリンパ節の同定率、リンパ節転移診断率、5年再発/生存率である。再発/生存率の評価は時間を要するため現時点で言及できないが、他項目はリアルタイムで現状評価が可能であり、期待通りの成果が集積されつつある。目標症例数に達した際には子宮体癌におけるセンチネルナビゲーション手術の実施妥当性を証明できると考えている。 研究は現在概ね予定通りに進行中であるが、実施していくうえで若干の問題が浮上している。センチネルリンパ節の術中迅速診断に用いているTRLBC法についてである。本法の転移陽性を診断するための特異度が96%すなわち4%の疑陽性があるという問題である。疑陽性を更に低下させるための手段として、現在別途スタディを計画中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年1月に臨床試験をスタートしてからの子宮体部悪性腫瘍患者数、および試験参加資格者数、および試験参加者数は2017年が88例、54例、23例、2018年が85例、43例、33例、2019年第一四半期が31例、21例、18例である。試験参加者数を試験参加資格者数で除したものが患者リクルート率で、これを2017年、2018年、2019年第一四半期の順に並べると43%、77%、86%であり、当初と比べてリクルート率が倍増している。 試験登録者数は現在まで74例と目標の半数程度だが、現在までに輸血や再手術を要した症例はなく、リンパ浮腫、リンパ嚢胞、血栓症、創部離開、他臓器損傷の発生例はない。またセンチネルリンパ節の同定率は両側同定82% (61/74)、片側同定14% (10/74)、失敗4% (3/74)と過去の大規模研究のいずれよりも優れた成績をあげている。更にリンパ節転移診断率については最低リスク群で0% (0/47)、低リスク群で15% (4/27)、とプレリミナリーな研究における期待値(最低リスク群で3%、低リスク群で12%)を再現している。これまでに4例のセンチネルリンパ節転移症例が確認されているが、術中診断に用いているTRLBC法の感度は100%(4/4), 特異度96%(67/70)つまり疑陽性率4%とこちらも期待以上の成績をあげている。生存率は現時点で評価できないものの、2例の再発例はリンパ節再発を起こしておらず、また追加治療が奏功して生存(完全寛解1例、部分寛解1例)しており、研究継続に支障をきたすような問題とはなっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床研究の実施期間を当初は3年程度と考えていた。開始初年度の患者リクルート率が低かったため試験登録者数が目標の半数程度だが、現状では9割近いリクルート率を維持できている。従って試験期間の延長は1年程度で済むと試算している。本年度中に試験実施期間の延長を申請する予定である。 センチネルリンパ節の術中診断に用いているTRLBC法は転移陽性を診断するための感度は100%であるが、疑陽性が4%程度ある。これは許容できる値かもしれないが、改善の余地があると考えている。研究では真の転移陽性をmacrometastasis/micrometastasis、真の転移陰性をisolated tumor cells/no malignant cellと定義している。本研究における疑陽性例は術中診断が陽性であったものの、永久標本ではisolated tumor cellsと診断されたケースである。Isolated tumor cellsは乳癌領域では系統的リンパ節郭清は不要と結論されており、郭清を実施した後に合併症を引き起こした際にはそれが過剰診療と見做される。本研究の2例に対しても実際に系統的リンパ節郭清が実施されている。我々はこの2年間においてTRLBCの細胞診標本上に出現する異型細胞のサイズと数によって微小転移(micrometastasis)と孤立性腫瘍細胞(isolated tumor cells)を区別できる可能性が高いと考えるようになった。これを証明するスタディを並行して推進することにより、疑陽性の問題は更に最小化できる可能性があるため、別途スタディを計画する予定がある。
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Causes of Carryover |
臨床試験の遂行およびデータ管理に関わる必要経費を人件費として秘書に渡している。旅費は極力私費で賄うことにより総支出を抑えてきたため次年度使用額が生じた。 今年度に関してはいよいよデータが集積されてきたため学会発表を複数予定している。引き続き人件費は必要だが、旅費がこれまで以上に必要となる予定。最終的には適正使用の下、補助金を使い切りたいと考えている。
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