2015 Fiscal Year Research-status Report
一過性虚血による内側前庭神経核ニューロンの膜特性変化に対するセロトニンの影響
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15K10742
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
紫野 正人 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (20550015)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | セロトニン / 虚血 / 内側前庭神経核 / パッチクランプ / 発火特性 / 電気生理 |
Outline of Annual Research Achievements |
内側前庭神経核は前庭動眼反射・前庭代償の中枢であり、舌下神経前位核とともに神経積分器としての役割ももつ脳幹神経核である。椎骨脳底動脈循環不全(VBI)のような脳幹の一過性虚血に際して、内側前庭神経核ニューロンは電気生理学的な特性を変化させることが過去の文献や申請者が行ってきた先行する研究から明らかとなっている。一方、脳幹縫線核で生成されるモノアミン系神経伝達物質であるセロトニン(5-HT)は、虚血などのストレス負荷により前庭神経核において、その濃度が上昇することも知られている。 そこで本研究では一過性虚血による内側前庭神経核ニューロンの膜特性変化に対するセロトニンの影響に着目し、電気生理学的側面から、その機構を解明することを目的とした。 初年度の平成27年度は、今後研究を遂行していくうえで基礎となる生理的条件下での内側前庭神経核ニューロンのセロトニン負荷による変化を観察した。苦痛を与えないよう深麻酔をかけた3週齡のwistar ratから250-300μmの脳幹スライス標本を作製し、パッチクランプ法(current clamp)にて内側前庭神経核ニューロンの自発発火を記録する。記録が安定した後にセロトニンを40μMで投与すると、自発発火頻度は1)減少するもの、2)増加するもの、3)変化しないものの3つのパターンがえられた。次に、この自発発火頻度の変化がニューロンの内因性膜特性変化によるものか、周辺からの情報入力によるものかを確かめるために、興奮性(=グルタミン酸作動性)入力と抑制性(=GABA作動性・グリシン作動性)入力をそれぞれの阻害剤によって遮断した状態で同様の記録を行ったところ、上記の3パターンの自発発火頻度変化がえられた。これより、内側前庭核ニューロン自身がセロトニンに反応して、自身の膜特性を変化させていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画よりは若干の遅延がある。なぜなら、コントロールとなる非虚血条件下の内側前庭神経核ニューロンに対するセロトニンの膜特性変化に多様性があるためである。文献的にはスパイク間隔が延長して発火頻度が低下すると想定していたが、実際の実験から得られたデータは発火頻度が変化しないものや、逆に発火頻度が上昇するニューロンが存在した。このため一過性虚血による自発発火停止後のセロトニン投与による変化が、セロトニンに依存するのかあるいは虚血に依存するのかの判断がつけにくくなるからである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方法 投与するセロトニンの濃度により内側前庭神経核ニューロンの振る舞いがことなるかを観察する。またセロトニンがニューロンの膜特性に与える変化を詳細に検討するため、セロトニン受容体のサブタイプ(5-HT1A,1B,2,3)別に、それぞれのagonist,antagonistを投与して受容体特異的に興奮性or抑制性変化、あるいは無反応などの反応を観察する。本研究では研究分担者を設定していないが、教室あるいは学内の当領域に精通した研究者と意見交換を行いながら研究を推進する。
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Causes of Carryover |
今年度は実験動物、実験小物、試薬などの消耗品の消費量が少なかったために、無理に年度内消費を行わずに次年度への繰り越しとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した分と今年度分の研究費をあわせて、実験動物や試薬、あるいは昨年度からの実験成果を学会発表するための旅費などに使用する予定である。
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