2015 Fiscal Year Research-status Report
メタボリック症候群における難聴と血管障害の関係について
Project/Area Number |
15K10751
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山下 裕司 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00210419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 一真 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (20346555)
下郡 博明 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70226273) [Withdrawn]
廣瀬 敬信 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (80555714)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メタボリック症候群 / 難聴 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病に代表されるメタボリック症候群患者では動脈硬化に代表される血管性病変を通じて,重篤な疾患の原因となるだけでなく,老化を促進することが知られている。内耳においても,糖尿病患者に感音難聴の発症率が高いことが過去の疫学研究で明らかにされている。これまでの研究から,高血糖に伴う難聴者の内耳では感覚細胞障害,らせん神経節細胞障害,血管条の萎縮といった形態の変化が原因であることが知られているが,これらの組織的変化を生じる原因は明らかにされていない。これらを明らかにする目的で,本年はメタボリック症候群モデル動物の内耳を用いた分子生物学的解析を行った。メタボリック症候群モデルマウス(TSOD),TSODのコントロール動物(TSNO),野生型マウスの内耳より抽出した mRNAを対象にマイクロアレイ法にて検討した。その中でメタボリック症候群の内耳には,炎症性サイトカインの発現増加,脂質代謝関連蛋白質,成長因子の発現低下が認められた。さらに免疫組織化学染色を用いて,発現部位について検討を行い,その意義について解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に行った分子生物学的実験によって,メタボリック症候群モデルマウスの内耳に多くの遺伝子変化が生じていることが明らかにされた。これらの意義を明らかにするために免疫組織化学染色を行い,遺伝子発現に変化が見られる内耳での局在を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
メタボリック症候群モデル動物の内耳について,in vitroモデルを作成する目的で,高糖濃度培地を用いた内耳器官培養系の確立を目指す。具体的には,卵形嚢培養は過去に報告した方法(Sugahara et al, 2006)でCO2インキュベーター内で行うが,培地を変更することで,メタボリック症候群に類似した環境を,網膜神経節細胞の培養で行われている方法(Shanab AY et al, 2012)を参考に作成する。高糖濃度培地(通常培地にD-glucose(45 mM)等を追加)したもので内耳組織を培養,24時間後に固定,免疫組織化学(抗カルモデュリン抗体)を行い,有毛細胞の残存率を評価する。高糖濃度の程度を変えることで,有毛細胞障害の程度を検討し,内耳高糖濃度培養系を作成する。 この系が確立できれば,培養卵形嚢を用いた発現遺伝子の評価をモデルマウスと同様に行い,メタボリック症候群の内耳障害の原因について,詳細に検討する予定である。作成された高糖濃度卵形嚢培養を用いて,予防モデルを作成する。候補薬物としては,炎症性サイトカインを抑制することが報告されているPG合成酵素阻害薬,PDEIII阻害薬,脂質代謝改善薬であるスタチン製剤あるいは漢方薬の大柴胡湯,防風通聖散,糖代謝を調節して細胞死を予防するアルドース還元酵素阻害剤等を予定している。 高糖濃度による内耳障害に影響のある薬剤が明らかになれば,メタボリック症候群モデルマウスに投与することで,in vivoの実験を行い,経時的に内耳機能や内耳組織の変化について検討することが可能となる。
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Causes of Carryover |
本年度の分子生物学的実験において,モデルマウスの購入を予定していただが,実験が順調に経過したため,予想より低額に抑えられ,未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた未使用額は,平成28年度に計上した物品費と併せて使用する。
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