2015 Fiscal Year Research-status Report
急性中耳炎治療における肺炎球菌フェーズ変化と治療への応用
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15K10757
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
戸川 彰久 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70305762)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 早織 和歌山県立医科大学, 医学部, その他 (20644090)
土橋 重貴 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (40725553) [Withdrawn]
熊代 奈央子 和歌山県立医科大学, 医学部, その他 (50746435) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / 急性中耳炎 / 莢膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤耐性肺炎球菌の増加により、特に肺炎球菌が頻回に検出される2歳以下の乳幼児において、急性中耳炎などの感染症の治療に大きな問題が生じるようになった。なかでも肺炎球菌による急性中耳炎の臨床経過は重症を示すことが多く、遷延化すると考えられる。最近の我々の研究で急性中耳炎にて外来受診をした患児の中耳・鼻咽腔からの肺炎球菌Tranparent型Opaque型の存在の割合を、catalaseを含有したTryptic soy agar 寒天培地を用いて検討すると鼻咽腔ではTransparent型として存在するが、中耳由来の肺炎球菌はOpaque型として存在する可能性が高いことがわかってきた。また肺炎球菌は環境に合わせて莢膜量を変化させる。鼻咽腔では、莢膜が薄いTranparent型が優位であるのに対して、中耳貯留液中では莢膜が厚いOpaque型が優位である。本研究では、肺炎球菌の感染過程における莢膜量の変化およびマクロライド系抗菌薬による莢膜量の変化を検討する。肺炎球菌株をTHY培養液で培養した後に、TSA寒天培地にてコロニーの形態を検討するほかELISA法によりクラリスロマイシン添加による莢膜量の変化を検討する。Detroit562細胞をもちい、培養細胞上に肺炎球菌を添加した後の上皮細胞への付着と莢膜変化を検討した。クラリスロマイシン添加群ではTranparent型株が有意に多く、莢膜抗原量は非添加群に比べて有意に低値であった。 肺炎球菌は、莢膜量を変化させることで、培養細胞間隙へ侵入し感染をきたす。クラリスロマイシンは肺炎球菌の莢膜量を減弱させる。これらのことからも、肺炎球菌の莢膜量変化が肺炎球菌の定着に極めて重要と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の実験計画では本研究では教室の今までの研究成果を踏まえ、肺炎球菌の莢膜構造の変化であるフェーズ変化に注目し、鼻咽腔および中耳腔といった環境因子の肺炎球菌フェーズ変化に与える影響を検討を目的としている。現時点では肺炎球菌の形態分類が可能となり、クラリスロマイシンの影響に関する検討もできている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後肺炎球菌のフェーズ変化におよぼす抗菌薬のコンビネーション療法の影響に関して検討予定である。。BHI培養液にて最小発育阻止濃度の1/8、1/16、1/32、1/64、1/128の濃度に希釈した抗菌薬を肺炎球菌に暴露させ、対数前期増殖期:Early log phase(600nmにおける吸光度が0.3)および対数中期増殖期:Mid log phase(600nmにおける吸光度が0.5)での肺炎球菌の増殖とフェーズ変化、莢膜量の評価を行う。この際2種類の抗菌薬を併用することにより、その相乗効果でより効果がえられないかを検討し、臨床における急性中耳炎の治療に抗菌薬の併用療法が効果を与える可能性を探る。 また今年度はフェーズロック株を用いたマウス鼻咽腔感染モデルを用いて肺炎球菌に易感染性を示すCBA/Nマウス鼻咽腔へ接種した後の宿主免疫応答について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
、肺炎球菌の莢膜構造の変化であるフェーズ変化に注目し、鼻咽腔および中耳腔といった環境因子の肺炎球菌フェーズ変化に与える影響について検討を行っている。平成27年度には、フェーズの変化に関しては肉眼的な観察とともに肺炎球菌のフェーズ変化の定量化を行い、抗菌薬の影響について研究を行っていたが肺炎球菌培養やassayに関する費用が想定より少なくすんでいる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度以降では、肺炎球菌標準株を用いさらに肺炎球菌の増殖とフェーズ変化への環境因子や抗菌薬併用療法の影響について検討する予定である。さらに、マウス感染モデルを用い、抗菌薬による肺炎球菌フェーズ変化への影響についてin vivoでの検討および培養上皮細胞に肺炎球菌を感染させ、上皮細胞への付着、侵入時の肺炎球菌のフェーズ変化について調べる予定である。
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