2015 Fiscal Year Research-status Report
妊娠中のウイルス胎盤感染が児の聴力に与える影響についての研究
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15K10771
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
守本 倫子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 医長 (40286555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮入 烈 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 医長 (10296626)
齋藤 昭彦 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30531389)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウイルス感染 / 遅発性難聴 / 母胎感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
母胎ウイルス感染では,妊娠初期に感染したために出生後より難聴を伴うことが少なくない。これは進行性、遅発性に難聴が生じることもあるため、難聴が先天性なのか後天性なのかもしばしば区別ができないことがある。現在先天性難聴の原因の約50%は原因不明であり、母胎ウイルス感染による可能性を探索する方法の確立が望まれていた。 本研究の目的は、臍帯を用いてさまざまな母胎ウイルス感染の有無を検索する技術の開発と可能性の検証にある。特に無症候性(Asymptomatic)の症例では出生直後に診断されることがないため、あとから正確な診断がつけられる手法は重要である。申請者は保存されている乾燥臍帯からDNA,RNAウイルスを同定することに成功した。本手法を用いて、 1) DNAウイルス検索:先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染の検索にはRT-PCRを用いて臍帯、血液濾紙のどちらからも後方視的に検査することが可能であった。この方法を用いることで、他のTORCH症候群とされるトキソプラズマや単純ヘルペスの感染検索も可能であることが推測された。 2) RNAウイルス検索:風疹ウイルスでは臍帯からの検出は可能であったが、臨床的に先天性風疹症候群(cCRS)と診断されている人の臍帯13例のうち3例が陰性であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染検索研究では初年度は34件の先天性難聴児の臍帯を検査し、1例陽性例が得られた。また、このような方法で診断された無症候性cCMV症例は14例あり、平均38カ月で遅発性難聴を発症すること、さらに8歳頃で聴力が進行性に低下することが明らかになった。脳画像検査(MRI)でも灰白質の異常などが有意にみられ、聴力の経過追跡が重要であることから、本検査による確定診断の重要性が示唆された。聴力の変動には脳画像検査結果とβ2ミクログロブリンが関係しているとの報告もあり、今後それらについても検討を行っていく予定である。 先天性風疹症候群(CRS)感染検索研究では臨床的に先天性風疹症候群(cCRS)と診断されている人の臍帯13例のうち3例が陰性であったことから、症例を追加して、臨床症状との整合性を検討している。ただし、2012-2014年に風疹が流行したことによりcCRS患者が増加したものの、現在は全く発生していない。このため、症例を追加しての検証には支障を来している。 トキソプラズマ、インフルエンザ、エンテロウイルスなどが妊娠中に感染することにより中枢系の発達に障害が生じることが示唆されているため現在周産期科や神経科と検討を行っているところであるが、試料の入手法も含め検討を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
1)本手法を発展させ、乾燥臍帯から高い抽出効率を保ちながら短時間で確実にRNAの抽出が行えるような技術開発を行う。 2)現在手法が確立しているDNAウイルス検索について、サイトメガロウイルス検索は引き続き行い、難聴が変動するときのウイルスの活動状況とβ2ミクログロブリンの関係なども検討を行う。 3)トキソプラズマの感染は妊娠中に明らかになっていることが少なくなく,出生頻度は低い。また、インフルエンザは不顕性感染が少ないが、症例も多く、罹患が明らかであるため臍帯による検索がしやすいと思われる。
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Causes of Carryover |
サイトメガロおよび風疹ウイルスを臍帯にて検索する技術を開発している。しかし、先天性風疹症候群の患者がそれほどいるわけではないため、検体が集まりにくく、研究が滞りがちになる。他のウイルス検索の有用性も検討するため、今年度はトキソプラズマやインフルエンザ、エンテロウイルスなどの母胎感染も検討する予定としており、複数の実験系を組み立てることから、試薬などの購入費用が必要となる。また検査を行う技師が必要となるため、雇用する人件費を計上して実験を進めることとした。このため、次年度に使用額を増額させた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに実験系を確立したサイトメガロウイルスおよび風疹ウイルスの検索を続行するための費用および新しくトキソプラズマやインフルエンザ、エンテロウイルスなどの実験系を確立するための物品、RT-PCRに必要な試薬などの購入費用と、集中して数ヶ月の間に検査をやっていただく技師を雇用する費用を計上した。
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Research Products
(4 results)