2015 Fiscal Year Research-status Report
One airway, one diseaseの機序解明と新しい治療戦略
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15K10793
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
神田 晃 関西医科大学, 医学部, 講師 (70375244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 良樹 関西医科大学, 医学部, 講師 (10375298)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | one airway, one disease / 好酸球性気道炎症 / nasal-bronchial reflex / 抗コリン剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
上気道と下気道の炎症性疾患の関連性に対して”one airway, one disease”という概念が提唱されている。その代表的な疾患である難治性の好酸球性気道炎症では、上気道の炎症を治療すると下気道の症状も改善することが知られており、実地臨床において大きな関心事項となっている。Evidence-based medicine (EBM)に基づいた新たな治療戦略の確立が急務となっている。そのメカニズムとして、① nasal-bronchial reflex (NBR)、② 炎症性メディエーターのドレナージ、③ 炎症性メディエーターの全身性播種などが考えられているが、ほとんど解明されていないのが現状である。申請者は、そのメカニズムの一つとして上気道と下気道の間に神経学的なinteractionであるNBRを介した経路が存在していると考え、そのメカニズムの解明と臨床応用を目指す。 平成27年度は、NBRの存在に関しての基礎的データの蓄積を中心におこなった。特にNBRのメカニズムを解明するために、上気道抵抗(鼻腔抵抗)と下気道抵抗(肺気道抵抗)を同時に測定することができるシステムを作成した。鼻腔刺激が肺気道抵抗にどのように作用し、逆に肺刺激が鼻腔抵抗にどのように作用するかを関するために、気道疾患マウスモデル(OVA腹腔内感作 / OVA点鼻チャレンジマウスモデル:OVA / OVA)を用いて、詳細に比較検討した。 平成27年度の研究結果では、上・下気道間にNBRの存在を示唆する興味深い結果を得た。本研究を継続することは、NBRをターゲットにした新しい治療戦略の開発に大きく貢献する研究になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 測定方法の確立: 鼻腔刺激による肺気道抵抗の測定と肺気道刺激による鼻腔抵抗の測定を個別に、あるいは同時に測定することができるシステムの構築とその運用を目指し研究をおこなった。我々が作製したプロトタイプを改良し、予備試験を重ねそのプロトコールの確立を目指している。特に、マウス鼻腔抵抗を測定する方法が確立されていなかったため、安定して測定するための工夫をおこなった。また、同時に当該装置の特許申請をおこない(特願2015-061415)、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の医学部合同新技術説明会にプロトコールに関しての発表をおこなった。
② NBRの有無に関する検討: 気道炎症が惹起された状態では、気道過敏性が亢進しており、様々な症状を引き起こす。例えば、鼻腔では鼻汁増加と鼻閉が出現し、一方、肺では、気道抵抗が増加し喘鳴が出現する。この現象は、炎症局所の知覚神経刺激を介したコリン作動性(副交感神経)の神経経路によって引き起こされることが知られている。この気道過敏性を評価する方法として、コリン作動剤であるメサコリン(MCH)の負荷が一般におこなわれている。そこで、MCHの鼻腔刺激が下気道にどのように影響するか、その一方でMCHの肺刺激が鼻腔抵抗にどのように影響し合っているかを検討した。予備実験で得られたデータ通り、鼻腔へのMCH刺激は、肺気道抵抗を増大させ、肺へのMCH刺激は、鼻腔抵抗を増大させることが明らかになった。さらにこの効果は、正常マウスと較べOVA / OVAモデルでは(アレルギー性鼻炎を合併した喘息マウスモデル)、有意に増強することが明になった。つまり、以上のことは、上気道と下気道間には、我々が推察したNBRによるinteractionが存在し、NBRは気道炎症に寄与する結果を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、NBRの経路の解明にフォーカスを当てる予定である。硫酸アトロピンで前処理をおこなった予備実験では、鼻腔刺激による肺気道抵抗と肺刺激による鼻腔抵抗がほぼ完全に抑制されていたため、少なくともコリン作動性の経路が存在すると考えている。その経路として、迷走神経が上気道と下気道をつなぐ重要な経路であると推察している。そこで、本経路を証明するため、基礎データの積み重ねをおこなう。 具体的な方法としては、物理的に神経経路を遮断して同様の検討をおこなったり、各種刺激剤や前処理を組み合わせたりすることでNBRのより詳細な経路解明を目指す。なお、刺激方法に関しては、ヒスタミン、SP、カプサイシンなどによる知覚神経刺激による実験系の方がより生理的であるため(OVA刺激ならばより自然だが)、各コンパウンドを用いて検討することも計画している。 我々の検討によって少なくともNBRがコリン作動性の経路によって影響し合っていることが明になった。しかし、この相互作用が疾患に対してどの程度寄与しているか不明である。そこで、正常マウスとOVA/OVAマウスでどのように影響し合っているかの検討を積み重ねる予定である。 近年、喘息治療対して、局所ステロイド剤に長時間作用性吸入β2刺激剤を組み合わせた配合剤による治療が開始されているが、COPDの治療薬である長期調整型抗コリン剤と局所ステロイド剤の合剤の開発も進んでいる。つまり、コリン作動性のNBRの機序を解明することは、EBMに基づいた抗コリン剤の新しい治療戦略(ステロイド剤を組み合わせた新しい配合剤開発などにも)のマイルストーンになることが期待される。
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Research Products
(1 results)