2016 Fiscal Year Research-status Report
摂食における咀嚼・嚥下複合体の解析:フレキシブル電極を用いた非侵襲的検査の研究
Project/Area Number |
15K10795
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
香取 幸夫 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20261620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥光 慶一 東北大学, 工学研究科, 教授 (00393728)
小山 重人 東北大学, 大学病院, 准教授 (10225089)
川瀬 哲明 東北大学, 医工学研究科, 教授 (50169728)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 耳鼻咽喉科学 / 喉頭科学 / 嚥下医学 / 頸部食道 / 弾性線維 / 神経叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究を継続し、健康成人の顔面頸部表面に新規開発したフレキシブルシルク電極を貼付して咀嚼運動および嚥下運動の測定を行った。試作装置において筋電図波形は得られるものの、発声や呼吸に伴なう生理的な運動によるアーチファクトが大きく出現し、咀嚼ならびに嚥下運動の抽出が現状では困難であった。 そこで本研究の対象となる咽頭・頸部食道の嚥下運動に関する基礎的なデータを収集するために、頸部消化管の柔軟性と運動性を組織学的に検討した。 消化管の柔軟性を検討するために、咽頭から食道壁の弾性線維の構造をヒト組織切片の免疫組織化学により解析した。エラスティカマッソン染色および抗エラスティン抗体を用いた組織染色により、咽頭から頸部食道を取り巻くように弾性線維からなる板状構造が観察された。このうち中咽頭から食道入口部にかけて2層の弾性板が消化管壁に沿って存在することを初めて明らかにし、下外側弾性板および後内側弾性板と命名し、国際誌に発表した。 消化管の運動性を検討するために、頸部を含む食道壁内の腸管神経叢の局在を免疫組織化学的に明らかにした。食道では筋間神経叢がNOSに富みTHに少なく副交感有意に構成されることと、頸部では神経節細胞の分布に乏しいことを初めて明らかにした。この所見から、頸部食道では蠕動運動のスパンが長いことと中咽頭の収縮運動と上部食道括約筋の弛緩がより直接的に食塊の移動に影響することが示唆され、これを米国嚥下障害学会(Dysphagea Research Society)で講演するとともに、国際誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フレキシブル電極を用いて咀嚼嚥下複合体をモニタリングする点で、呼吸や発声など嚥下動作以外の筋運動によるアーチファクトを除外して、咀嚼嚥下運動のみを抽出することが達成されていない。 研究全般の進捗として申請内容の計画から遅れているが、その一方で研究対象となる咀嚼嚥下運動の基礎となる弾性線維や筋間神経叢に関する組織学的研究が新知見を生み出し、咽頭および頸部食道の剛性や運動性が明らかになった。これらを国際誌に発表するなど、研究の途中で当初予想されていなかった成果が得られている。 総合して、やや遅れている状態と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、フレキシブル電極を用いた検査装置の改良に進める一方、体表から喉頭や下顎の移動距離をモニタリングする装置を用いた咀嚼嚥下複合体の計測をすすめる。加えて、呼吸運動と嚥下運動の位相が加齢等により変化することにより(吸気途中の嚥下動作が起こるなど)誤嚥リスクが増すことを検討する。加齢や頭頸部腫瘍などの耳鼻咽喉科疾患の治療時において咀嚼嚥下複合体の障害が起こる頻度や、その予防について研究をすすめる。
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Causes of Carryover |
咀嚼嚥下複合体の測定を行う実験が測定精度が担保出来ない状況で遅れており、そのため同測定に必要な電極作成等に用いる物品費が予定使用額より減少した。組織学実験により新しい知見が得られ国際学会での発表を行ったことから旅費が予定使用額より増加したが、それを差し引いても次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
嚥下状態を計測する実験の物品費として用いる。現在の筋電図測定による方法に加えて、他の方法で体表から咀嚼や嚥下の状態をモニタリングする方法を検討する際に用いる電極作成費用や記録媒体に使用する物品費として使用する。
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Research Products
(4 results)