2016 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌における低酸素誘導タンパク質の発現と高濃度酸素療法に関する研究
Project/Area Number |
15K10816
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
真栄田 裕行 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40264501)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | LOX-1 / 頭頸部癌 / 高濃度酸素療法 / P53 |
Outline of Annual Research Achievements |
低酸素濃度環境下に誘導される遺伝子、Lysyl Oxidase type-1(以下LOX-1)遺伝子が、頭頸部扁平上皮癌において高頻度に発現し、予後やリンパ節転移の予測因子になり得ることが報告されている。しかしLOX-1の癌増殖あるいは癌抑制における分子レベルでのメカニズム、さらには臨床面においての役割や意義については未だ不明な点が多く残されている。本研究は最終的にLOX-1の臨床応用を目指している。すなわち頭頸部癌に有効な新規治療法を確立することが最終目標となる。 この目的を達成するため初年度(平成27年度)の短期目標として、癌細胞におけるLOX-1の役割を解明することを挙げた。平成28年度も前年度に引き続き生化学的手法を用いて研究を継続した。すなわちLOX-1とP53、あるいはcyclinD1との発現の相関を明らかにし、また各々の関係性の変化が癌細胞に与える影響について検討した。具体的方法としてヒトLOX-1のcDNAクローニングを行い、種々の方法で結合タンパク質の探索をすると共に、抗LOX-1抗体を作製してLOX-1の細胞内、あるいは組織内発現を検討した。さらにLOX-1、P53およびcyclinD1遺伝子を各種細胞系やマウスに組み込んで細胞レベル、あるいは個体レベルでの影響についての研究を準備中である。 これらの実験が順調に遂行されれば、高濃度酸素環境下におけるLOX-1、P53、cyclinD1の発現とその関係性、癌細胞や担癌個体レベルにおける癌生物学的特質の変化についての関連性が明らかとなり、高濃度酸素環境を利用した新規の頭頸部癌治療の方法を確立させるための指標に繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.各種発現ベクターの構築 LOX-1遺伝子のcDNAクローニングおよび抗LOX-1抗体の作製はすでに終了している。加えてタンパク質発現のためのベクター作製が概ね終了した。具体的にはクローニングされたLOX-1およびP53、cyclinD1のcDNAを哺乳類発現ベクター系(pcDNA3)、大腸菌発現ベクター系(pGEX-6p、pET30)、バキュロウイルス発現ベクター系(pFastBac-HT)、酵母発現ベクター系(pBTM116)、レトロウイルス発現系(pMX-puro)にサブクローニングし、各種の実験に対応したコンストラクトを複数作製した。これらの発現システムはすでに稼働できる状態にあるが、いくつかは現在も作製中である。 2.頭頸部癌組織におけるLOX-1、p53およびcyclinD1の発現解析 作製した抗LOX-1抗体を用いて生検材料、手術検体など複数の癌組織におけるLOX-1の発現および安定性を解析した。また頭頸部以外の癌組織におけるLOX-1の発現を比較検討した。方法はウエスタン解析法によるティッシュアッセイおよび免疫組織学的手法を用いた。またP53およびcyclinD1の発現とLOX-1の発現の相関に関する検討も、同じく手術時に切除、採取した腫瘍検体を用いて行った。具体的には腫瘍の切除断端におけるLOX-1、P53、cyclinD1の発現について前述の方法で検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は引き続き発現ベクターの構築を継続すると共に、酵母ツーハイブリッド法による基質タンパク質の同定や、LOX-1とその結合タンパク質に関する細胞生物学的解析のための実験を計画している。これらの実験が順調に遂行されれば、以降は頭頸部癌細胞株を用いたLOX-1、P53、cyclinD1の発現解析や、下記のごとくマウスを用いた個体レベルでの実験を施行する予定である。 LOX-1遺伝子改変マウスの作製および解析 生化学的もしくは細胞機能上重要と判定されるLOX-1のトランスジェニックマウスまたはノックアウトマウスを作製し、個体発生における影響を調べる。特にLOX-1ノックアウトマウスにおける発癌の異常に注目する。その他にもこの遺伝子操作マウスを使用した個体レベルの解析により、既存の発生異常または癌と類似の病理および臨床症状を呈する疾患が存在するかを検索する。
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Causes of Carryover |
平成27年度購入予定であった大型備品、中型遠心分離機500mlボトル用(予算1250000)は、当院の中央機器センターの備品が借用できることとなったため購入不要となり、そのため平成28年度も平成27年度からの繰り越し予算が執行できない状況であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
LOX-1およびP53、cyclinD1の細胞内局在を可視化するために蛍光顕微鏡の購入を検討中である。予算内に収めるため当初はリースを利用する予定である。
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