2017 Fiscal Year Research-status Report
喉頭麻痺に対する線維芽細胞増殖因子を徐放させた自家筋膜移植術の検討
Project/Area Number |
15K10825
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
永井 浩巳 北里大学, 医学部, 講師 (70237486)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 再生 / 自家筋膜移植 / 塩基性線維芽細胞増殖因子 / drug delivery system |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神経や血管の支配がなくなり廃用した喉頭組織を再生させる目的で、成長因子である塩基性線維芽細胞増殖因子を徐放させた自家筋膜移植を実験動物で行っている。まず、喉頭に入る主要血管と神経を切除・焼灼し、喉頭麻痺モデルを作成した。神経支配の消失から十分に時間が経過(16週間)してから、移植治療を行った。治療効果は、治療後、12週間して検討した。治療効果は、組織学手法で判断した。各症例の摘出喉頭を薄切(連続切片)し、HE染色を行った。薄切枚数を考慮して、各構造物の大きさを計測した。神経麻痺によって萎縮した筋肉は、治療群で、筋肉の肥大が確認できた。移植した自家筋膜の大きさは、bFGFを徐放しない群が、bFGF徐放群より、有意に残存していた。一方、脂肪組織の大きさは、有意差を認めなかった。さらに、組織の様相を見るため、血管内皮細胞の標識マーカーであるCD34抗体と、シュワン細胞などを指標とするS100抗体を用いて免疫染色を施行した。内喉頭筋のひとつである甲状披裂筋は、声門の閉鎖に関与し、萎縮で起こる声帯の弓状変化にも関与している。このため、この甲状披裂筋で、毛細血管網やシュワン細胞の分布について検討した。この結果、治療側の甲状披裂筋は、毛細血管網が増加し、再生に関与するシュワン細胞などが増加していた。このことは、この治療が新たな血管・神経構築を起こせる可能性を示唆するものである。現在、この再建組織の神経支配の中枢を確認すべく、研究を継続中である。治療によりできた組織の神経支配の中枢が、どこなのか。このことが判明すれば、これを利用して、さらに充実した組織構築ができるのではないかと考えている。健側からの支配であれば、健側に神経栄養因子などを絡めることで、より有効な神経支配が可能であり、肥大した筋肉の再萎縮化の防止になるのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
42匹のラットを購入した。本年度は、主に、逆行性神経トレーサを用いた喉頭の支配神経の中枢の検索実験に従事した。まず、ラットは、全例、左反回神経と上喉頭神経の切断を行った。5例の手術中、手術後の死亡例があった。喉頭麻痺モデル作成後、4か月してから、自家筋膜、bFGFの徐放を組み合わせた移植を行った。ところが、移植術後の呼吸障害や嚥下障害などが生じ、前半は、かなりのラットが、注入実験に入る前に死亡してしまった。そこで、気道確保の方法など工夫したところ、後半からは、喉頭注入に臨める症例が増えてきた。現在、まだ喉頭への注入はできていないが、移植後3か月まじかな症例があるので、次年度からは、喉頭内注入実験ができると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、逆行性神経トレーサの実験を進めていく。移植後の気道確保については、気管切開孔を工夫した。さらに、麻酔をネンブタール単独から、ドミトール、ミダゾラム、ベトルファールの3種混合麻酔を使用し、拮抗薬としてアンチセダンを用いた。これで、手術後の覚醒が良好となり、手術後の気道でのトラブルが減った。移植術後の栄養状況については、十分に注意深く観察していくことにした。まだ、喉頭注入に問題があるものの、先行実験でハミルトンシリンジでの注入が可能であることを確認している。あとは、移植後の症例でのトラブルが起こるかどうかがカギとなる。免疫染色は、徐々に手法が確立できてきており、順次染色していく予定である。
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Causes of Carryover |
組織学的検討において、実験棟の火災により、計画的な実験の検討が進まなかった。さらに、染色の初期実験が、なかなか染色できず滞ってしまった。現在、各検体の染色を順次行っている。また、神経トレーサの使用実験において、順調にモデル動物の作成ができなかった。技術的問題もあり、改善し、現在は症例を増やせている。ただ、このため、新生組織の神経支配の中枢を同定する実験にまで至っていない。動物の還流方法や脳の摘出の手技は確立できているので、あとは、喉頭内に神経トレーサを注入できれば、順次検討できると考えている。次年度の使用分は、これらの検討における試薬の購入とラットの食費の費用に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)